きのこ小話
とある地方に珍しいきのこがありました。
そのきのこの名は紫死茸。
特徴は食べると死ぬこと。
鉄板ネタは、文字通り死ぬほど美味しい。
食べた者は体が紫色に変色し、泡を吹いて死にます。
何故死ぬのかは解明されていませんが、食べてから30秒ほどであの世行きです。
しかし、そんな凶悪な茸を食べて死ぬものが後を絶ちません。
別に見分けがつきにくいとかそういうわけではないのです。
統計上、きのこを食べて死ぬのは大方老人ばかり。
どういうことかと言うと、あまりにも美味しいものと聞くから、
寿命が近くなったらせめて食べて死にたいということです。
このきのこを食べた老人は、
全員涙を流してUMAすぎると言ってから死ぬそう。
この奇妙な自殺文化はいつの間にか世界に浸透しました。
初めは行政により販売禁止令が出されましたが、
次第に安楽死が認められる国で一部使用が開始され、
それを皮切りに広がっていったそうな。
今ではコンビニにも紫死茸が売られています。
ただし、毒殺防止の為、扱いは厳格に行われます。
当然、この自殺文化はあるものに影響を及ぼします。
平均寿命です。
自殺文化が広がる前の世界の平均寿命は、
男78.6歳
女81.2歳
これが自殺文化の浸透により、
男50.1歳
女63.4歳
に変わりました。
シンプルな話で、自殺が簡単にできるし、大きな快楽を得ながら死ねるのです。
そりゃあ、平均寿命も縮みましょう。
これを悪いことと捉えるか、良いことと捉えるかは難しいでしょう。
少なくともこの自殺文化は人類の幸福度上昇に貢献している面があります。
誰しも救いを求めるもの。
今では宗教よりもきのこによる死を救済とされ、心の支えとなっています。
いつでも逃げられるというものはそれはそれは心強いものでしょう。
また、計画的自殺数の増加により、
遺産相続における血縁者同士の喧嘩減少やら、
特殊清掃員の仕事が減るやら、良いことがたくさんあります。
一方で、未来ある若者が多く死んでいくのは大きな負の面と言っていいでしょう。
ですが、わざわざ無理をして生きる意味があるでしょうか?
ひと時の気の迷いで死んでしまってはもったいない。
それはそうでしょう。
ですが、世界は決めたのです。
この自殺文化を広めることを。
私は思います。
これからも、世界はキノコに支えられ、より幸福になっていくでしょう。
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