第42話 大人の階段と幸せ

 目が覚めるとヨゼフは泣いた涙の後をぬぐっていた。


「どうして、泣いておられていたのですか」

 モニカが部屋に入り、そんな質問を言ってきた。

 心の奥底から心配しているのだろうが、モニカだけには知られなくない。

 モニカだけには。



「まあ、大人の階段を登ったからだろうね」

「ピーピー(男って馬鹿よね)」

 フェニが火の鳥を連れて、やってきている。


(ど、どどどどどどどどうしてそれを)

 顔からどっと汗が出る。滝のような汗があふれ出て、大変なことになっている。


「まあ、臭いがね。うん。うちの隣の馬鹿親のにおいがするんだ。すごい消えてはいるんだけど、何となくね。あと、気配。何というか、感というか、慣れというか、妹とか弟とか、増えそうだとか」

 フェニが顔を真っ赤にしている。


「ふふふふふ、不潔なっ。えええええええええええっちなのは」

「大丈夫。ただ、アウロラさんが僕の布団に入ってきて、精霊眼の使い方を教えてもらったというか、何というか事故だよ事故ッ。あれは絶対事故なのッ!」

 羞恥と周知のぶつかり合いで気まずい空気。だが、フェニはその空気を見て、にやにやとしている。


「初心だねえ。まあ、恋人もいないアタシには腹立つことだけど、まあ、許してやるよ。はい、アタシが許すっとね」


 何だろう。納得できないのに、納得できるこの空気感。

 モニカが顔を真っ赤にしまくり、ヨゼフが臭いを確認している状態。

 何とも言えない。

 

 だが、ヨゼフとモニカの目があうとそらしあう空気が甘酸っぱい。

 ヨゼフは何もできない感じ。モニカも流石に主をののしることが出来ず、困っているような。


「お前らはなんだ。出来立てのカップルか! あ、甘い。甘酸っぺえよ。何でこんなこと頃にアタシがいなきゃならんのだ。よし、外でよう外!」


「服が無いんですけど」


「服はやっと乾いた。変態精霊、アウロラさんが舐めていない限り乾いている。まあ、大丈夫だろ。アウロラさんでも変なことはしない筈だ」


 アウロラの扱いはまあ、アレな見解なフェニさんである。



「いやああああああああああああああ。甘いのはお姉ちゃん好きなのおおおお! ようぅし、モニカさんとの恋愛プロデュースをお姉ちゃんがしちゃいますよおおお」

「わしもいるぞおおおおおおおおお。パンツウウウウウ」


 と、そこで変態精霊が現れるが叩き出された。


「いらん。とりあえず、そこの執事。着替えさせろ」

「僕一人で着替えられます。ウォータードラゴンさん、女の子さんです」


「いや、心は男の子」


 手が怪しい。もにゃもにゃ動かすな。


(こんなに幸せでいいのかなあ。僕……これ、幸せすぎるよ)


 なんて、ことを思うヨゼフだった。

 しかし、外は何故か、曇っており、何かが告げるようにも思えた。


「ヨゼフ! ヨゼフはいるか!」


 そこに男の大音声が混じった。






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