第39話 再会と騒ぎ
「ウォータードラゴン、あんた、何を今行ったか分かる?」
アウロラの口調は非常に重い。
「ひたい~ひたいでふ~~ひたい~~~~やへてぇ」
ついでにウォータードラゴンの口を引っ張っている気持ちも、ヨゼフにもわかるが、やっても無駄だからやめてほしい。
「オトマイアー家はどうなっているんですか……」
ヨゼフはいつもの可愛い顔を真っ青にさせて、聞かされた事実に愕然としている。
「そいつ、オトマイアーのああ、『生活水』か」
ラルフがそう言ったところには何も感情が無かった。
同情も恨みも何もない。
「ちょっ、親父。折角救ってくれた恩人に何を」
「だから、だ。子供だとしてもオトマイアーの人間だから、アネッタを養っていて、最後には喧嘩をするようにして追い出した人間の子だからだ――俺にはどうでもいい話だが、領主様への平民の気持ちはそれくらいだ」
言葉は相当きつい。感情は無い、わだかまりは無いといいたいのだろうが、ラルフという人間は海の男だからなのか、どうしても不愛想で素っ気なさのせいで、怖く思うのだろうとヨゼフは思う。
「そうですか」
ふり絞るように答えた声は弱弱しい。
どう答えていいのかヨゼフにはわからないのだ。
「わりぃな。お前は多分違う。目が違う。犬みたいな目だ。でも、どこか、今変わろうとしている。それを曲げて欲しくない。だから、お前の精霊? だっけ、その話をきちんと聞いてやってくれ」
「――はい」
言葉言葉は短い。でも、そこには温かさと厳しさが混在している。父親がいたら、困難なのだろうと思うと、やっぱり胸が苦しくなる。
「ジャコモ、ぶっとばす? ぶっ飛ばしに行こうよ。ウォータードラゴンをクラーケンに入れて、暴走させて。最悪だよ。色々とやりすぎだよ――お父さんだから無理かもしれないけど」
アウロラが強い言葉で諭してくる。
ヨゼフは迷っていた。本当にジャコモを精霊で倒すのでよいのか、と。
アウロラは努めて強い言葉で言ってくれただけで、判断は任せてくれている。
「ま、それよりもヘルムートのやつがどうなるかわかんねえ。あのハゲ、絶対にやってきて、ぼこぼこにしようとしてくるぜ。確実に――まあ、今のヨゼフなら、何人きてもハゲにできそうだけどな。ハゲしい」
ちなみに他の海の男たちにもハゲはいたので、気にしたほうがいいと言いたいが、フェニの目がものすごく喜んでいるので言えない。
「おっ、港が見えてきたぞおおおおおおおおおお!」
船頭の男がついにそんなことを言い始めた。
「僕は……」
「まずはゆっくり考えましょう。アネッタさんが待っていてくれますよ」
「うん……そうだね」
モニカが優しい言葉をかける。気持ちがわかるのだろう。
船が接岸した瞬間、何かが飛んできた。
「ラルフウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!」
風の魔法をまとったアネッタが情熱的に飛んできて、ラルフに飛びついた。
ぶっちゅうううううう。ズッキュウウウウウウウウウウウウウウン
情熱的なキッスだった。
「見ちゃいけませんっっっ! えっちなのはいけないんですですですですですですううううう」
(はわわわわ。かすかだけど、柔らかないのがああああああ?????????)
ラルフにも気持ちいいえっちな世界が広がっていくのであった。
「これがえっちなのか」
ウォータードラゴンの感慨深い声がどうも癪に障ったのも忘れてはいけないと、ヨゼフは心に刻み込んだ。
「うっきいいいいいいいいいいいいいい。姉じゃない。あれはただの愛。姉じゃないくっそおおおおおお! ストレスがたまるううううう!」
アウロラがおかしくなっているのも心配だった。
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