第37話 男装少女

「何というか、熱血できそうな少年ですね。じゅるりぃ。ボクを熱血ユニゾンさせてくれれば」

 と言いながら、ウォータードラゴンだった、執事のようなパンツルックの青髪少女がヨゼフをまじまじと見ている。


「よく見ると、女装したヨゼフみたいだなあ……」

 とぼそりとフェニがつぶやく。


(こんな女残しているかな僕)


「まあ、そうですね。ボクの本体はウォータードラゴン。でも、人間の姿の方が便利なので、色々とユニゾオオオオオオオオオオオオンして、体を模写します。特に男の子が好きなんです」


「確かに男の子なんですけど、紙が少し長いし、体が丸みを帯びて、どう見ても男装している可愛い女の子……ヨゼフ様が筋肉が無くあどけない感じの顔で、とっても可愛いから特に」

 モニカがボソボソとしゃべっている内容は聞こえており、ヨゼフは体を鍛えなくてはいけないと思った。

 

(絶対に体を鍛えて、男らしくなるんだ。絶対に)


「どぉあああああめええええええええええええなのおおおおおお!! 弟君はこのままがいい。このままがいいのおおおおお。顔に出てた。絶対にそれは駄目。モニカちゃんも思わないかなッ? 「弟君、今が一番かわいい同盟」とか、モニカと絶対組めると思うむっつりスケベ具合もあるし、わかるよね」

「シッ、失礼なッ。で、でもぉ、わたしからはなにも、ええ。何も」

 どうして、ヨゼフから視線を外すのだろう。どうして?


「えええっと、その、うん。僕は強くなりたいんです。だから筋肉をつけて。そうです。クラーケン料理とかは陸について焼けば、きちんとおいしく筋肉がつきそうな感じがします」


「うーん。ボクはお勧めしません。君のような子はそのあどけない姿とどこか、弱弱しくも芯が強くて、かわいいのがいい。強いて言えば、ヒロイン? のようなかんじがしてたまらなくて、じゅるり」


 何か何やらわからぬ12歳の少年の貞操概念が崩れていく。


「はあ、なんだこいつら。お前だけだな。火の鳥。普通なの。まあ、ヨゼフを囲んでみんなスケベなだけで、頭がおかしくなっちまうよ」

「ピーピー(しっかりするよ)」


 という悲しいやり取りがあったものの、フェニの救援した船と難破した船を上手く調整して、マリンフェルトへの道はどうにかなりそうだ。


 だが、性癖のゆがんだ精霊2柱とエルフの視線がヨゼフにはどうにも怖くて怖くて、仕方なかった。


「ど、どどどどっどどどうしよう僕。フェニお姉さん」


「ん~それを言うのはやめてくれ。いや、嘘じゃないぞ。マジで。アウロラ姉さんの顔がやばい。見ていられない顔になっている」


 ヨゼフも直視したくないほど、顔がぐちゃぐちゃになっていて、怖すぎるホラーになっているアウロラ。

これが、光の精霊なのだろうか。違うだろう。


「キーッ! なんでぇ、お姉ちゃんは私なのに! 私なのにぃっ!!!!」


 あと、モニカがきょろきょろとヨゼフを見ている。


「私はお気になさらずに」

 と言いながら、ヨゼフをちらちら見続けるのはやめない。


「駄目だよ。筋トレは駄目だよ駄目駄目」


 アウロラはもっと直接的でうざい。


ウォータードラゴンも二人の不審者の様子を見ながら、たまに変なことを言っているのが気になって仕方なかった。


「ユニゾンもいいけど、このおいしい状況も好きだ。うんうん。一応、波を強くして早くしているけど、もう少し遅くしてにやにやしたい」


 流石に遅らせるのはやめさせた。


そうして、マリンフェルトの港についたのは航海に出て、4日後だった。


「ところで、ウォータードラゴンは何でクラーケンに捕まっていたの?」


「あ、あの海賊たちとヘルムートとその父親だっけ、ジャコモに捕まって、色々とされて、気づけば、ハイ」


 重要なことを言わない馬鹿がここにいた。

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