第36話 ヘルムート、ハゲをさらす
「ウォータードラゴン。最高なところに」
『なんですか。なんですかこれ。やばくありません。ひええええええ。逃げましょう。ボクの力ではどうにもなりませんよ。無理無理いや、無理無理無理無理ですって』
というどうも、女の子なんだけど、なんかおかしい喋りの声が頭の中に聞こえてきた。
そして、ウォータードラゴンの姿が半透明になって――
「待って待って待って待った! そこに君の好きそうなショタがいる。君と友情を深めて、ユニゾーーーンしそうな男の子がいるから契約しろってんだ!」
アウロラのキャラがおかしくなるほど、叫ぶ。
というか、内容も良くわからない。
『うおおおおおおおおおおおおおお! それはいい。契約だあああ!』
ウォータードラゴンとあっという間に目があった。
火の玉大砲が飛んできているのに、そこだけが切り離されたように空気がしんとして。
「あ、あのその、ユニゾンって何でしょう?」
『なんかかっこいい言葉だあああああああああああああああああああああああああ』
言葉が通じていない。おかしすぎる。なのに、ウォータードラゴンが迫ってきて、ヨゼフのおでことウォータードラゴンの額にある青い宝石のようなものがひっついて。
水があふれた。
(えっえっえっぇつえっ?? どういうことなの? 船が難破しちゃう。ダメダメダメダメダメダメあっ)
しかし、そのことを思った瞬間、精霊眼の金が一瞬輝き、水が収まる。
気づけば、泡に包まれたヨゼフたちの船と海賊たちが海から噴き出る水柱にやられていることに気付く。
「ハッ、ハッハッゲエエエエエエ。あいつ、なんですかあれ?」
と、気づくと横に青い髪と同じような色をした宝石を額につけた執事のような少年――いや、体の丸みから少女が急に現れていた。
「え、あっ、その僕の兄のことですか。ヘルムート=オトマイアー」
「えっ、あのつるぴかぴかハゲって、オトマイアーのクソガキ。ああ、あなたはご主人様ですから馬鹿にしませんが、オトマイアーの馬鹿なんですか。まぬけえええええええええ」
確かに。現在、モニカと戦っていたはずなのに、橋げたから船に押し戻されて、ハゲをさらしながら、気絶している。
しかも、船の頭で倒れているから、とても目立って、間抜けだ。
「はーげ! ハーゲ! はーげ! わかはーげ! しかも、精霊の光か何かで焼かれているか何かだから、ずっと生えない。カツラで隠さないとハゲは隠せない感じですねあれ! 最高に笑える」
憐れ、突然の急襲にやられ、ハゲをハゲしくさらされたヘルムート。
「ぐぐっ、ちくしょう。こんなんじゃないっ。こんなんじゃ……」
――そこに最後、生え始めていた頭頂部の1本分の髪の毛がはらりと抜ける。
最後の。
「仕方ないだろう。あんたはやり方を間違えているんだよ」
気絶してうめき声をあげているだけの状況。そこに筆頭執事の男が吐き捨てるように言葉を告げる。
ヨゼフの耳にそれは何故か綺麗に入り込み、執事の悲しげな表情が忘れられ泣か有った。
そして、海賊たちの士気は低かった。オトマイアーのやり方がきにいらねえと、海賊たちが去っていく。
せめてものとばかり、オトマイアーの船も下がっていく。何事も無く。
ずるずると下がっていく姿は情けないとしか言えない。
「すっごーい! 弟君! この性癖のゆがんだ男装執事ドラゴンをあっというまに従えるなんて」
アウロラが言った言葉とともに、ふと、目の前にいる青髪の美少女(執事)がヨゼフを見てきた。
「ええええっと、ありがとう? 力を貸してくれて」
「ですですっ。だから、僕とユニゾン」
(だから、それは何?)
と突っ込みたかったが、ヨゼフは疲れて、言葉が出なかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます