第20話 ヨゼフの目覚めた力と契約

(目が覚めるとそこにモニカが――いて欲しかったんです)


 ヨゼフは頭にたんこぶを作りながら倒れていた。しかも、近くでは青い爺さん亀がワンワン泣きないていた。


(精霊界の空も青いんだね。とても青いや。なんか涙出ちゃう)

 

 12歳のエロガキ欲望を叫びまくった挙句、最後に欲望の大本の女性に殴られて昏倒する。

 穴があったら入りたい。一生。

 あと、さめざめと泣き続けたい。泣いて泣いて枯れるまで泣いて、死ぬまで泣き続けたい。恥ずかしすぎる。辛い。



 ふと、横を見ると、亀も頭にわっっかりやすいほどのたんこぶを頭に作り、髪の毛をメラメラ燃やしたモニカらしきエルフと、それをいさめているフェニがいた。


「どうして、私のパンツをのぞこうとするんですか! 駄目ですよメッ!」

「だってなだってな、ワシはオスなんじゃ。別に孕ませるとかうぼべっ」


 自業自得。


 どれだけ、あの亀は懲りない爺なんだろう。ヨゼフはもう涙をこらえて、空を見つめて現実逃避したいくらいなのに。


「元気出して、お姉ちゃんの胸に来て泣きなさい」


 プイッ。無理だ。アウロラのあまあまに飲み込まれるともっと、モニカから冷たい目で見られるか。多分、再起不能になっちゃう。


「えええええっ、弟君の反抗期ッ。ショックだよっ!」

 アウロラがすねて、土をいじり始める。


「元気出しなよ。12歳の少年だから。それくらい、あるからなお姉ちゃん」

 フェニがそういった瞬間、アウロラの顔がキラキラを輝いて、


「私がフェニのおね――「そういうの無しで」ちゃん……」

 アウロラは項垂れた。短いお姉ちゃんだった。


「騒がしいねえ。モニカ、大丈夫? 気持ち落ち着いた?」

「ピィーピィ?(大丈夫?」

「えっ、まっあっはい。亀さんも納得されて、落ち着かれたようですし」


 ヨゼフから見たら、未だ不満まみれなのだろうが、亀の方は大人らしい。どっしりと座り込んで、モニカのパンツの方向を向かなかった。


「で、ランドタートル。元気……だよね。暇しているよね」

「アウロラ様。彼女のおぱ――うおっほん。暇です」


 大分メラメラとしている髪の毛が収まったものの、精霊闘士エルフさんの力はまだ、あるらしい。


「そこの精霊眼の男の子と精霊契約してくれない?」

「なんと? 人とですと? この高位精霊であるわしが? その火の鳥程度ならば、よいかもしれませんが、わしがこんな子供とあいたっ。まぶしっ、イタイイタイ痛いようやめてください」


「殴るよ。あと、光ぶつけるよ」


 もうやっていますね。アウロラお姉さん。


「何故。1000年、人間はわれらを忘れて、魔法を使って」


「だからこそ、精霊眼を持った少年がここに現れたのかもしれない。だから、ね」

 アウロラの言葉にランドタートルは目をつむり、暫く黙り込んだ。


 そして、目をクワッと見開いて、ヨゼフの金眼――精霊眼を見つめ、ため息をつく。


「良いのですな」

「うん。アウロラの名でお願いするわ」


 そのやり取りは重々しく、重要な何か。ヨゼフはこのまま流されてよいのかと言おうとしたが、何故か答えられない。


 アウロラの金眼がまっすぐ、ランドタートルを見つめていて、今までとは違う何かを持っている。


「僕からもお願いします」


 と頭をヨゼフも下げた。


 ランドタートルは前の右ひれを出す。


「手を出せ。そして、自分はどうなりたいか思え。願え」

「僕は強くなりたい。誰かに守られるだけじゃ嫌だから」


 ヨゼフの手とランドタートルのヒレが合わさり、紫色の光が舞った!

 まぶしい紫の光に目がつぶれそうだ。

 でも、ヨゼフの精霊眼は目を開け続け、光を見続け、自らも金色の輝きをやめない。

 

{あ、冷たい。でも、これは僕の中の力だ!)


「ここに精霊眼を持った少年とランドタートルとの契約はなった! 力を貸そう!」

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