第16話 いざ、新たな扉を開けるに

「ということで、すぐに行こう。修行場はあるんだよね~。精霊術士として強くなり体だとか男の子ならあこがれると思ってた。ずっと、私がヨゼフを見ていたころ、妄想をしていて、作っていた結果が結びついてよかった。いや~、こういう展開があると思ってね。あと、だれかついてくる子はいるかな?」


「ずっと見ていたんですか。なら、助けてくれるとか」

 モニカの言葉はもっともだ。だが、アウロラは言葉をつぐむ。


「力が無かった。ヨゼフはそこまでの力が無かった。心の力、それが本当に無くて、12歳になって、やっと追放されかけて、現実を知り強くなった。ごめん。それまではヨゼフの負担にしかならなかったんだと思う」


 アウロラはヨゼフを抱き寄せる。

「だからもっともっと、甘やかしたいと思ったんだけど、12歳なんだね。思いが強い。あと、新たな世界への扉、ヨゼフのちん――」

 ヨゼフの下半身にアウロラの魔の手が。うねばきゅーん。うねべきゅーんうねうねと。


「僕嫌いになるよ」


「やめて。それだけはやめてください。死んでしまいます。やめてください。ほんとうにやめてくださいやめてくださいうわあん。やめて、やめて」


 アウロラの即座のジャンピング土下座、高速100回!


「何というか、精霊というか、化け物に見えてきません? アウロラさん」


「しっしっしつれいな! 私は結構偉い光の精霊です。だから、修行場もこうやって、入り口をどこでもだせるんだ~」 


 アウロラが良くわからない発音で赤いドアを出して、開ける。

 そこは大量のヨゼフの顔、前身、抱き枕、タンスいっぱいのヨゼフの泣き顔やら

笑みを浮かべた、いっぱいのせか――


「わたし、やっぱり、この人には任せたらいけないと思い」

 

 モニカがそういった瞬間、ドアの先が変わり、森が広がっていた。


「ふーっ。ナンノコトデショウカ?」

 アウロラのしょもうない誤魔化しがあったものの、森の先になぜかヨゼフは魅かれた。


 ふらふらと意識が持っていかれ、まるで酔っ払ったような千鳥足のようになりながら、歩みを進める。何故だろうか。


 匂い。色。肌の感覚。何かが重いはずなのに、まとわりつくようなものなのに。自分となじむ。空気感がヨゼフの中に強烈に吸い込まれる。

 

 あそぼ? あそぼ?


 そこにいるのは小さな子供。でも、大きさはぬいぐるみのようでモンスターのようで、モンスターのようでない。おとぎ話に出てきたおうちの守り子ブラウニーのように思える。

 彼らのいる場所――ヨゼフの故郷? ああ、近い言葉は故郷だろうか。

 だが、言葉にしようとすると霧散する何かに阻まれて、すっとドアの奥の森に歩みをヨゼフは進める。

 自信を持って進める。


「ヨゼフ様――あぶな」

「ヨゼフ、おい、鳥よ。とめ、ああいくなって、おいっ」


 女の子の二人の声が聞こえるがどうでもいい。


(僕はようやく、ここにやってきた。多分、個々なら、僕は――強くなれる)


 そこは巨大ながけや森が広がる不思議な場所だった。ひらひらと体を広げた魚が飛んでいたり、火の鳥と同じような鳥が大量に飛んでいる世界。


「ようこそ、精霊の世界へ。弟君! 新たな扉を開けたよ!」


 アウロラが高らかに声を出した。

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