第11話 ハゲまされるざまぁねえ領主
「くそっ! くそがっ! あのくそがきがっ!!!!!」
マリンフェルトにあるとある高台には領主の館(別宅)がある。ここもオトマイアー家の領地であるが、ジャコモがいるわけではない。
ハゲ。
ハゲの少年が代行としているのだ。
「落ち着いてください。ヘルムート様。ハゲしく怒られましても、何も変わりませぬぞ」
と、お目付け役の執事が諫める。だが、彼の運命はそれで大きく転落する。
「誰がつるつるのハゲだああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
父親譲りの残忍な睨みを執事に見せる。執事は震え上がる。
「どうぞ、お許しを! 寛大なお許しを! お願いします。ハゲしく怒られます事は何も生みませんから!!」
諫める言葉は正しい。正しいはずだが、ハゲにされたヘルムートにとっては何の意味もない。ただの挑発であり、自分のみじめさを笑うだけにしか見えない。
指をパッチンとハゲの少年が鳴らすと、手にこめられた魔力が吹き出され、執事の顔を火で覆う。
執事は自分の火を振り払おうと顔をたたくが、魔法で作られた有力な魔法使いによって作られた火は木っ端庶民がどうにかできるものではない。
「あああああああ、ぎゃあああうぐやうううがあああああ!」
悲鳴を上げ、執事は死を覚悟する間もなく、焼き尽くされた。
ヘルムート(ハゲ)の執務室に一つの死体が転がった。
あが、そんなことをヘルムートにとってはどうでもいい。
執務室のドアがノックされ、メイドと他の執事が現れる。
「この執事をどこかの海に投げ込んで来い。クラーケンの餌くらいにはなるだろう。特産物の味になっていいもんだなお前はな」
労いの言葉もない言葉は持っているものにしかいうことではない。与えることは必要だろうが、時と場合によるのだ。持たない者には少しの優しさがあればいい。
オトマイアーはそうやって、生きてきた。
だから、いまヘルムートが思うことは燃やしたものではない。
だが、髪の毛がつるりとないことについていった執事は許すことはないだろう。今でも自分の髪が生えないのだ。
裏では若ハゲの領主代行と言われているのは知っている。
「忌々しい。ああ、忌々しい。何て忌々しいんだ。あんな魔法が使えないクソ弟が女に慕われ、俺をこんな髪にしやがって。くそがっ! しかも、親父に頭を冷やせ。そのままの髪でいて、反省しろだと?」
ヘルムートは親指を噛み、忌々しそうに領地を見つめる。
そこはマリンフェルトの街並み。ジャコモに与えられた場所であり、これからの自分の栄光の始まりの場所だ。
だが、その街並みのどこかにあのヨゼフがいるらしい、という情報が入った。
「ああ、これは復讐の時期だ。俺をこんなハゲにしやがって。どれだけ世話を焼かせるんだ。どれだけ、俺のプライドを傷つけて、世話を焼かせるんだよ。ホント、最低だよ」
だが、ここは自分の領地。縄張りだ。ならば、
「嬲り殺してやってもよいことだよなあ」
ヘルムートはいやらしい笑みとこれからの計画を練り、高らかに笑った。
丘の下に広がる海には大量の船が通っている。多くの積み荷が有り、大切なものもある。
だが、一番の主役は。
「クラーケン料理、うまいよなあ」
ヘルムートはいやらしい笑みを浮かべ、これからのことを考えていた。
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