第10話 罰ゲーム(フリフリのメイド少年)

「僕はどうして、女の子の給仕服を着ているんでしょうか」

 しかも、かわいいフリフリの服で、明らかに実用的ではない。これは確実に趣味の入っている何か。少女趣味というものではなかろうか。


「そりゃまあ、ね。大暴れした男たちの弁償? フェニが来たがらなかった給仕服を着せて見世物にして、もうけようとしているからだアッハッハッハッ!」

 アネッタの言葉は非常に正直であった。あまりにも正直すぎて、ヨゼフは泣きそうになる。


 だが、子供から少年へ羽化する前の姿はどこか、倒錯めいているのも聞いたことがある。ヨゼフが聞かされたモニカの恐怖の話である。

 思い出したくないことをヨゼフは思い出してしまった。

 確か、怖い男や女の人たちがヨゼフをなぜか、可愛い女の子の姿にして、触りまくる。本当に色々なところを触りまくり、スカートをめくられ恥辱の嵐。

 おトイレにも連れていかれず、漏らすまで我慢をさせられるだとか。

 その話を聞いてから、一日眠れなくて、気づいたら最後のおねしょをした記憶があるくらいの記憶がある。

 あれはぞっとするほどの悪夢だ。想像もしたくない。

 なのに、どうしてこんな格好をヨゼフはしているのだ。


「わ、わわわわわたしはお小遣いを残しています。このまま、お連れまわしをして、色々なものを渡してしまいそうです。お財布はどこでしょう。うーん、どれくらいだせばいいのでしょうか」


 そのモニカの目の色がおかしい。言動も相当おかしい。すべてがおかしい。これは身の危険を感じる。これは連れまわされて、おねしょを。


「罰ゲーム。いい風にできそうだねえ。お金ちゃんと賠償してもらえそうだ。にゃっはっはっはっ」


「い、いいいいいえ、正気に戻ったおじさんたちをお二人が殴り倒して、金返せって、全額出させましたよね」

 震え声で答えるヨゼフ。


「うん。そうだね」

「なのに、どうして、僕は女の子みたいな恰好をさせられて、給仕をさせられているか」

「きゃーああああああああっかわいい。これ、弟じゃなくて、妹に目覚めちゃいそう。たまんないからあああああ。よし、これを買い取ろう。でもお金がないや」


 アウロラもおかしくなっている。弟を愛でるお姉ちゃんじゃなくなっている。


「あほか。コイツら……」

「ぴーっ、ぴ……(だめだね)」


 どうやら、フェニと火の鳥だけはまともらしい。というか、アネッタはただの商売っ気が出ているだけだが。


「フェニお姉ちゃん助けてください」

「え、あ、そのえっうっ、あっその、うん。とりあえず、服を着替えてこよう」


 フェニにヨゼフは助けを求め、事なきを得ようとするが、


「お姉ちゃんは私! アウロラ! 駄目ですっめっ!」

「わたしもお世話しますから! 駄目ですよ!」


 とまあ、カオスになるマリンフェルトの1日目の世は更けていくのであった。

 

「これも幸せなのかな」

 なんてことをヨゼフは思いながら、海の匂いの港町の空を見上げた。

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