第7話 幸せ気絶

「大丈夫でしたか。ヨゼフ様。3日も眠っておられて」


 3日? そんなに自分は眠っていたのかと、ヨゼフは驚いた。病弱な体なのに、よく死ななかっただろうと思った。


「大丈夫。だって、ヨゼフは精霊に祝福されているのよ」

「また、わけのわからないことを……と思いましたが、体の調整はどうですか?」



「すごいぷにぷに。子供から、少年への羽化の直前」

「変態精霊の言うことは、どうでもいいのですが、びっくりするほど体の調子に異常が無いように見えます」


 モニカの言うとおりだった。ヨゼフの体は3日眠っていたというのだが、違和感がない。今まで、虐待されていた時よりも体の調子が良く、気持ちも晴れやかである。


「まあ、私が悪かったかもしれないね。アウロラわたしという精霊はかなり強い精霊だから。私がずっといたから、重みがかかっていたのかもしれない。それは謝る」

 アウロラは板張りの床に正座で座り、土下座を行おうとする。


「別にいいです。僕が生活魔法しか使えないほど弱かったから、体の調子も悪かったのかもしれないから」

「やっさしい。だから、ヨゼフはだぁすきなの。流石、弟君。ヨゼフって、ほんといい子よね。抱き着いちゃうすりすり~うりうり~」

 アウロラは目をハートマークにさせて抱き着いた。


 ぷよぷよしたプリン。そういえば、食べたことが無いな。あれって、どれくらいおいしいんだろうか。ああ、こんな白い色をして、気持ちいい感触をしているのだろうか。あああ、甘いかもしれない。

 ヨゼフの中の悪魔が叫ぶ。そうだ、触ってもいいかもしれないんだろうこの感触。これはお姉ちゃんが許しているんだ。気持ちいい感触。そうだ、もういないお母さんの感触を味わってもいいんだ。色々なところを触って、どこかの小さなボタンを触っても。


「お母さんの味が僕にも感じてもいいんだろうか。そうだ、そうなんだ。これならば、僕が吸っても……………ごくり」

「お姉ちゃんの教育的チョップ! チョップ! チョップ! チョップ! チョォオオオオオップ!!!! あたたたたたたたたたただあああああっ! エッチなのは駄目ッ! いけないのっ! 12歳の弟君には刺激が強すぎるのッ! 駄目駄目駄目駄目なのおお」

 お姉ちゃんアウロラの連続チョップは、100連発だった。


「あいたたたたっ! 痛いっ!」


「流石にこれは、モニカというメイドとしても仕方のないことだと思いますが、その私のは少しなら」

 モニカが顔を真っ赤にしながら、水平線ではないが、人波に存在するそれを両腕で抑えている。


「ぴーっ! ぴーっ!(桃色空間禁止っ!)」

 火の鳥の言葉にハッと気づいたモニカがヨゼフをアウロラから引きはがそうとする。

「はっ! 駄目でした。くっつくな! 乳お化け! このっ、離れなさい。ヨゼフ様から離れないとヨゼフ様がオッパイ魔人になっちゃう」

「駄目ッ! 私はお姉ちゃん。これから甘やかして、甘やかすの。この子の不幸だった人生を渡し色の駄々甘やかしで幸せににしてあげたいのっ!」


「もごっ、うぐっ、もごごごごっ」


 ヨゼフの顔がアウロラの食い込むプリンへの特攻を果たす。


(ふわああああっ、これはなんだこれは気持ちいい。はわわっわ、吸いたい。やっぱり、吸いたい。吸いたいのぉ)

 ヨゼフのオッパイ魔人の扉が開くっのは今だ――


 と、そこで、近くのドアが開き、宿屋の主人の女らしき人物がやってきた。


「何やってんだい。モニカとゆかいな仲間たち」

 呆れ気味な女性の声と、


「モニカ、わけのわかわからないことをしない」

 ポコン、とお盆の音。 


「痴女のお姉ちゃん? お坊ちゃんがもう気絶しそうだ」

「いたっ」

ボコンっと、アウロラの音が聞こえた。


(ふわああああっ、しあわせえええええ気絶ってあるんだぁあああああああああ)

そして、ヨゼフは幸せでまた、気絶した。






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