第4話 精霊術士③
「綺麗でしょ。火の鳥さん」
アウロラの言葉にヨゼフは納得した。モニカも不服そうだが、何も言わないところから認めざるを得ないらしい。
ヨゼフの頭の上に1羽の赤い小鳥が乗っていて、淡い赤い灯を出しているのだ。まるでランタンみたいなのだが、熱くはなく、冷たくもなく、ただ優しくあたりを照らしてくれている。
まあ、アウロラの方が光っているし、うるさいし、目立ちまくっているのは内緒である。指摘をすれば絶対にアウロラはすねる。
「あ、はい。ありがとう。本当に」
「ピッ」と小さな体をそるようにして、偉そうにする小鳥は可愛い。しかも、何故か、
(べべっに、あんたが精霊術士だからやったのよっ。守ってあげたら、もっとほめてもいいのよ。ほらほら、どう? なーんて思ってないからねっ!)
というなんだか、ツンデレな感情がはいってくるのもわかって、くすぐったい。かわいい。
「かわいいほんと」
(ちがうのっ!)
ピーピー言っているけど、明らかにばれています。
「もう、この子ったら、かわいいところがあるね。うりうり」
アウロラが小鳥の頬を軽く触る。小鳥は羽で払いのけて、うっとおしそうにアウロラから顔をそむける。
(違うったら違うのっ!)
「ピーピー言っているけど、内容が本当にかっわいいいいいいっ! 可愛すぎるわよっ!! この子、妹にしてやりたい」
というやり取りを見ながら、森を抜けているモニカだったが、
「精霊術士というのはこういう言葉をかわすことができることができるとか、そういうのなのですか?」
ヨゼフやアウロラの反応を見て、頬を膨らませている。
「まあ、そういうこともあるよん。けど、精霊は色々なことをしてくれる。まあ、私はヨゼフの精霊力に魅かれてやってきたけど、本契約はしていないから心を読んでもらうことなんてできないけどね。モニカちゃんも髪の毛黒いから、何物も吸収できる。精霊も使える力があるんだからね」
モニカの目が見開いて、顔が曇る。
「でも、私はエルフの村で、何もできなかったから」
ヨゼフは彼女のエルフの村の時代のことを知らない。語ってくれない。それくらい、辛かったのだろう。
「大丈夫だよ。モニカは僕をずっと守ってくれた。心は強いし、前向きだから。僕がこうやって、元気に前向きに生きてこれたのはモニカがいたからだよ――ありがとう」
「ヨゼフ様……」
モニカが涙を流そうとするが、きゅっと唇をかんで我慢する。
「そうだね。私もそんな弟――ヨゼフに
アウロラの体がまばゆく光り、歩いていた森の周りに大量のゴブリンがいることに気付いた。
「これって、どういう……」
「お姉ちゃんはス・パ・ル・タなの」
ということらしい。
「「たすけてええっ!」」
ヨゼフとモニカが悲鳴を上げるが、アウロラは腕を組み、笑顔を変えない。
「ピピピピゥ! ピッ!(やったろうじゃねえかよっ!)」
火の鳥の反応はその他の人たちと違い、喧嘩っ早かった。
そして、その意識がヨゼフの中に入ってきて、胸の奥底で爆発した。
「僕はみんなを守るっんだっ!!!!」
モンスターとは違う淡い赤いオーラ―を放ち、目をつむる。力をためた形なのだろうが、すぐに目を開眼させるとぶわりと小さな体から抜けたようには思えないくらい大量の羽が火の鳥から顕現し、ヨゼフの意識の通りに飛び回る。
火をまといながら飛んでいくので、ゴブリン程度であればすぐに燃やすことが出来る。
一瞬、ヨゼフの体から力が抜ける感覚がしたが、すぐに戻り、森に隠れていた40体くらいのゴブリンに火のついた羽をぶつける。
「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!」
「GYOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!」
悲鳴があふれ、ゴブリンだけが火だるまになる。
ゴブリンの面影が無くなるほど、燃えていくゴブリンたち。
だが、ゴブリンも負けていられない。
「AOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!」
森のがけの上から、現れたのはよくわからない羽や汚いローブを着たゴブリンが5体。
「あれはゴブリンシャーマン! 魔法を放ってきますよ! ああっ! すでに雷の魔法を」
ゴブリンシャーマンが放った神速の雷がヨゼフたちを襲う!
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