第3話 精霊術士②
「精霊術士ってなんですか?」
ヨゼフはアウロラにそのまま抱き着かれたまま、思った。
精霊ということは聞いたことがあまりない。というかほとんどない。
精霊なんてもの、子供が親から読み聞かさせられる本やたまにやってくる紙芝居屋が話すおとぎ話でしか聞いたことがない。むしろ、
「精霊って、恐ろしいものだとオトマイアーでは聞きました。それに僕が、いや、あなたは精霊、ばけ」
「お姉ちゃんはいい精霊。ううん、いいお姉ちゃんなのよっ!」
アウロラは前のめりになりながら叫ぶ。しかし、布まみれのある意味、痴女めいた姿にヨゼフは不信感しかない。いい子だからこそ、感想はそれしかないのだ。
精霊は1000年前に暴走して、人を殺しつくしたといわれている。それを正義の味方である魔法使いが封印したといわれている。
「エルフの中では、精霊は
「でも、あなたは精霊術士の系譜なんだと思うけどどうなの?」
「それは……ご先祖様にそういう人がいただけです。ただ、その先祖返りで魔法が使えず、捨てられてしまいましたが」
モニカは顔を伏せて沈んだ表情を見せる。
だが、顔を上げると、ぱあっと急に明るい笑顔を見えて、ヨゼフを引き寄せる。
「わわっ、やめて。恥ずかしいから」
「今もさっきまで、乳お化けに抱かれていたのだからダメですよっ」
頬を膨らませ、モニカは優しくヨゼフを抱いた。
アウロラに比べて、色々なところはふくよかではないが、優しさは負けていない。付き合いが長い、ずっといてくれたお姉ちゃんのような存在に抱かれると、照れくさくてたまらない。
「やーい! ぺったんぺったんひんそでひんにゅでお姉ちゃんじゃないの~」
「だまらっしゃい! 乳乳お化け! お姉ちゃんとかわけのわからないことを言って、ヨゼフ様をたぶらかして! 最悪ですよ!」
顔を真っ赤にして、モニカが怒る。
「えーん。ヨゼフ。ひんにゅーエルフが私をいじめるの助けて。乳お化けなんて、酷すぎない?」
「う、うーん。どうなんだろう。で、でも、喧嘩は本当に良くないと思います。僕は優しい人が好きです。喧嘩はやめてください」
「「わかった(ました)」」
かわいいかわいいヨゼフには、とっても弱い二人だった。
「それよりも、精霊術士の話も大切なのですが、追手が来そうな気がします。早く、逃げませんか?」
「そうだね。あと、その小さな火の鳥の説明もしてあげなきゃ。かわいそうだからね。おーよしよし」
アウロラの言葉にヨゼフは自分の頭の上に止まっている不思議な赤い小鳥の姿を思い出す。
「この子は?」
「ヨゼフ。あなたが私という精霊以外に初めて会って、使役した精霊の
アウロラはいつくしむように赤い小鳥とヨゼフを撫でた。
「すごいわ。お姉ちゃんとして、お鼻がとおおおおっっっっっても高いわ! 精霊術士の一歩を進み始めたのね! パチパチパチパチ! もっともっと、抱き着いちゃうわよっ!」
「うわっぷっ」
「やめてください。それよりも、火の鳥の説明! ここから逃げること! 早く説明してください!」
「せっかちなエルフはヨゼフに嫌われちゃうわよエルフちゃん。これから、歩きがてら、すっごおおおおおく、強くなるヨゼフの精霊術士のことを説明してあげるからねっ!」
ノリが軽くて、ヨゼフは何故か心配になったのは黙っておいたほうが良かろう。
多分、この金髪の
空気の読める12歳はそこも優秀で可愛いのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます