こんな日常が大好きです

 Side 星之 ツナギ


 普通の高校生の僕は戦争も何も知らない。


 だけど二人――


 軍人の御門 エリカ。


 アメリカに占領された日本に住むジェーン・フェザーライト。


 テレビの画面を見つめ、作り物の戦争のお話を観ている。



 舞台は外宇宙。


 敵の黒幕は昆虫型の地球外生命体を利用した人の慣れの果て。


 戦うのではなく、わかり合うために三段変形する赤と白の戦闘機で人型巨大戦艦の周辺を舞う主人公。

 

 バックに流れるBGMが美しくも悲しくもある。


 

 そして――

 


「「アルトォオオオオオオオオオオオオ!?」」


 

 主人公はヒロインの歌姫二人を置いて旅立った。



 =視聴後=

 

 

「いやー人型に変形する戦闘機も凄かったけど、歌も良かったわね」


 ジェーンが率直な感想を出すと「そう、だな・・・・・・」とエリカは感想を述べる。


「もう、エリカもクールぶっちゃって・・・・・・」

 

 などと二人は楽しんでくれたようだ。


 エリカも顔を赤らめて頷いてくれた。


 二人とも無邪気で、作品の事にさも当然の如く感情移入して僕もなんだか嬉しくなってしまった。


「本当に楽しんで観てくれてるね二人とも。制作者も喜ぶと思うよ」


 と、僕は言葉に出してしまう。


「まあな。こうして平行世界の存在が実証されたと言う事はもしかしてこの作品の世界が実在している可能性もあるわけだ・・・・・・」


 エリカはそんな話を切り出してきた。


「アメコミとかだとメジャーな設定なんだけど。近所のラノベ作家が言うには日本で平行世界の概念が広まったのは2000年代の半ばぐらいで10年代になる頃には浸透してたんでしょ?」

 

 と、ジェーンはエリカの話に食いつく。


「まあそれを逆手に取って遙かな未来でしたと言うのもあるみたいだ」


 エリカのその言葉に「そうなのエリカ?」とジェーンは尋ねる。

 それに「ああ。確認した」とエリカは返す。


 僕は世界が異なる美女二人が自分の部屋でオタトークしている現状に幸福感とディープな会話していることに(大丈夫かなこれ?)と不安を感じていた。


 だが二人の言わんとしている事は分かる。


 こうして自分達が楽しんで観て、遊んだ娯楽作品が現実として存在している可能性。


 それはもはや夢物語ではなくなったからだ。


 そこには楽しい世界だけでなく、悲しい世界や恐ろしい世界もあるだろう。


 だがワクワク感のような物を感じてしまう。


 新たな時代の幕開けを感じ取った。

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