ジェーン・フェーザーライト・元の世界にて+オマケ
Side ジェーン・フェザーライト
米ソの統治下にあるこの世界。
戦争のことばっか考えてて娯楽に乏しい世界。
日本のアメリカ領。
かつて帝都と言われた街。
核兵器を撃ち込まれて誕生した核の境界線、放射能の壁の向こう側はどうなっているかは分からないがきっと酷いんだろうな。
そんなことを思いながらラジオをつけて自宅のガレージでパワーローダーの整備をしている。
ラジオによるとまた日本解放戦線のテロがあったらしい。
むこうの日本は平和主義過すぎて病気のレベルだがこっちはこっちで考えものだ。
(これが普通よね。大都市に爆弾の雨を降らせて核二発も撃ち込んで民族浄化とかやらかせば普通は残党化して徹底抗戦でしょうに――流石に百年以上はやり過ぎだけど)
私の立場だったらそうするが流石に戦後百年以上経過しても戦い続けるのはどうかと思う。
あっちの世界のB級映画のナチスじゃないんだから。
なんでナチスが月面にいたりするんだろ。そんな科学力があったら第二次大戦勝利してるでしょ。
(ともかく今はこのアインブラッドタイプね・・・・・・)
私はガレージの中で制作しているパワーローダー。
アインブラッドタイプを制作している。
元々はアメリカが開発し、その驚異的な戦果を耳にしたソ連もアインブラッドタイプのパワーローダーを開発しているらしい。
いわゆるパワーローダーにおけるガンダ●のような存在だ。
定義は曖昧だが、これもガンダ●と同じで、角があって目が二つあって口になる突起物があればアインブラッドらしい。
ともかく今はそのアインブラッドを作っている。
(外観はともかくパワードスーツの限界かしらね・・・・・・)
ロボットならある程度デザインに自由が効くが、パワーローダーはパワードスーツ。
人が乗るんじゃなくて装着する兵器だ。
どうしてもデザイン性を捨てて機能面を重視した結果、不格好になってしまう。
まあそう言うパワーローダーも好きなんだけど。
(いっそ大型化する? それなら核融合炉も二つ載っけて、コンデンサも複数載っけて・・・・・・)
あっちの世界の作品の影響を受けまくった考え方だ。
この世界の技術社が聞いたら「馬鹿じゃないのか?」と一蹴されそうだ。
アイディアを向こうの世界から持ち込んだパソコンに打ち込んでいく。
この世界のパソコンと比べれば子供の玩具だ。
「ジェーン、またパワーローダー弄くってたんだ」
「ああ、アニー」
アニーがガレージの中に入ってくる。
褐色肌のツインテール。
底抜けに明るい女の子。
私と違い、まだジュニアハイスクールの女の子だが近所付き合いしている。
歳の離れた妹みたいなもんだ。
「パワーローダー進んでる?」
「アイディアで詰まってるし、休むわ」
「ねえねえ、向こうの世界の物語見せてよ」
「いいわよ――」
向こうの世界のPCはDVDやBDも観れる。
優れものだ。
アニーはどう言うジャンルの物が好きかは分からないがアニメとか漫画とか好きな傾向がある。
まあ私も似たようなもんだが・・・・・・
アニーは見掛けによらず頭がよく、日本語もほぼ学習してしまった。
「向こうの世界にお邪魔したことあるけど凄いね~本当に五十年以上も過去なの?」
と、アニメを見ながら言う。
「さあ? アメリカとソ連が分割統治した上に百年以上も冷戦続けたせいで大きく差が出ちゃったんだと思う」
「向こうでは確かアメリカの軍事基地が少しあって同盟国で、ソ連は崩壊してロシアになってた。軍事関連の分野はそこまで進んでない。レールガンも原子力の軍艦に搭載できるかどうかってレベルだし」
「定期的に殺し合いばっかしているこの世界よりかはマシだと思うけど」
「まあね」
この世界はとにかく血の気が多い。
核兵器は放射能をばらまくだけの凄い爆弾程度の認識で、戦争だって悪い奴をやっつけるヒーローショーみたいなプロカバンダ一色だ。
まあ、火●るの墓でそんな認識吹き飛んだが。
☆
火●るの墓を観たキッカケはあの世界で【海外に話題になる、評価の高い作品】についての話題をした時だ。
そこでふとそのタイトルが話題になった。
最初は馬鹿にして度胸試しで借りた。
そして――私は御門 エリカと一緒に泣いた。
私とエリカは分かり合えた。
アニーも観てしまって泣いた。
もう二度と見たくない最高の映画。
エリカは軍人として。
私は日本を占領しているアメリカ人として。
エリカと親友になれた作品だった。
いっそこの作品を世界中に普及したら世界が平和になるんじゃないかと考えてしまう程だった。
☆
「どうしたのジェーン!?」
そこでハッとなる。
どうやら私は涙を流していたようだ。
「ごめん、火●るの墓を思い出した」
それだけでアニーは察した。
「ああ・・・・・・うん。あれはもう戦略兵器だよね。あんなの見たら誰だって戦争なんかしたくなくなるよね」
「うん、わたし馬鹿だったわ――こうして平行世界の存在が確認できた以上、もしかして――」
「それ以上はいけない!?」
ああ、そうね。
あんまり考えちゃいけないわよね。
☆
Side 御門 エリカ in 元の世界での私室前
「どうして、どうしてこんな・・・・・・ひどい・・・・・・」
私の私室で榎本 シラベが泣く声が聞こえる。
「どうしてこんな惨いことを・・・・・・神様はいないの!? 人間はなんて愚かなの!?」
今の私は無力だ。
力なく扉の前で座り込み、涙を流す。
「やはりとめておけばよかったか・・・・・・」
火●るの墓の試練。
どんな手段を使ってでもとめておくべきだった・・・・・・
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