27話 ノーバイドへ帰ろう

 クイナはヴァルゴの元にやってきていた。クイナは余裕の表情で、ヴァルゴは憔悴した様子だった。周りの行動派の人間も、語る言葉がない。


「おら、ヴァルゴ。約束は守れよ。行動派は負けたんだ。わかるよな?行動派には解散してもらう。この街で、平和に暮らすんだ。別に、もう行動派のことを憎んだりはしない。ただ、もう二度と街に争いをもたらすようなことをするな」


「確かに決闘には負けた。男として認めるぜ。だがクイナよ、この街に未来はあるのか?若者はもっと豊かさを望んでいるんじゃないのか?俺は理想のために戦ったつもりだ」


「周りの者を思いやれない理想なんて、沼にでも捨ててしまえ」


 クイナは険しい表情で言い切った。


「とにかく穏健派の勝ちだ。行動派の者に伝えておいてもらおうか。ヴァルゴ、目を覚ますんだな」


 そういって、クイナはヴァルゴの元を後にした。穏健派の者たちの元へと向かうクイナだった。



 クイナが穏健派の者たちの元へ戻ると、穏健派の者たちは、クイナに頭を下げた。

 一人の老人が、クイナに近寄る。


「クイナ様、我々を導いてくださってありがとうございます。あなたは何の見返りもなしに、穏健派の長となってくれた。そのご恩は忘れません」


「あー、大丈夫大丈夫。雨が降っていたら傘をさすだろう?それくらい、当たり前のことなんだよ。こっちこそ、行動派の圧力にも負けずに、穏健派として支え合った仲間に感謝したいね。ありがとう」


 クイナは朗らかに笑った。そこにエリック達が近づいてきた。


「君たち、本当にありがとう。君たちが勝ってくれたおかげで、街の平和は守られた。心からの感謝をするよ」


 頭を深く下げるクイナ。その時間は長かった。


「勿体ないお言葉です。クイナ様が長で無ければ、どうなっていたことか」


 シノも頭を下げた。二人の信頼関係は厚い。

 それを見ながら、エリックは発言するタイミングを待っていた。頭を上げるクイナ。


「さて、約束は守らないとね。皇帝の棺の話をしないといけない。だが、バリアン遺跡で話すことでもないだろう。ノーバイドまで戻ったら、私の知っている情報を話すよ。みんなにも、ここから引き上げるように言わなければならない。少し待ってくれ」


「はい」


 頷くエリック。

 ようやく、皇帝の棺の手がかりが手に入る。

 クスハは無事だろうか。寂しい思いをさせてしまっている。

 エリックが帰ったら、喜んでくれるだろう。あの大好きな笑顔で、出迎えてくれるだろう。

 だが、帰るのはクスハを治す方法を見つけてからだ。

 必ず、見つけて帰ってからだ。


「みんな、ノーバイドに帰ろう!平和が待ってる!」


 クイナが、バリアン遺跡に響くような大声でいった。

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