第48話 教育 〜今が伸び盛り〜

魔法まほうと介護が合わない、その理由は何ですか……?」

 ぼくは、おそる恐るいた。

 この時どうしてこわがっていたのか、それは多分たぶん、ぼくが思いえがいていた介護の繁栄はんえいおびやかされるかもしれない、そう思ったからだろう。


 そんなぼくの思いなんか一ミリも伝わっていないのか、魔女ウイッチのココム・ツィツラ教育大臣きょういくだいじんはいつもの調子ちょうしで言った。

「誰も『合わない』だなんて言ってないでしょう? ま、私の魔法まほうを使えば、介護界かいごかいが良い感じになるかもねー」


「だったら!」


「でーも! 国民こくみん魔法まほうレベルは、全体的ぜんたいてきにめっっっっちゃひくいわけ。この意味いみわかる?」


「リクさん、それも私の責任せきにんなのです」

 がっくしと項垂うなだれるウミが、ぼくにあやまってくる。


 そうか……そうなのか……。

 一つ、有力ゆうりょく解決策かいけつさくうしない、ぼくの全身ぜんしんの力も失われるようにけていく。


 これが、現実げんじつ。残念ながら、現実。


 ならば、条件じょうけんというか、環境自体かんきょうじたいは、ぼくの住んでいた日本と大差たいさないということになる。

 つまりは、PCやスマホなどの電子機器でんしきき活用かつようしていくことが、喫緊きっきん目標もくひょうとなるだろう。


 でも、どうして……。


 ぼくは、躊躇ちゅうちょしつつも、ココム教育大臣のひとみとらえて投げかけた。

「ココム教育大臣は、魔法が得意とくいなのですよね? そんな方が国の教育分野きょういくぶんやにおけるリーダーなのに、何故、国民は魔法レベルが低いのでしょうか?」


「ここ数年だからね、お国が教育に魔法を取り入れたのは。となると、教育者きょういくしゃの理解も不十分ふじゅうぶんだったりするの。……というか、魔法ってやっぱそれなりにむずいわけ。数学すうがくでいう公式こうしきであったり、英語でいう文法ぶんぽうみたいなものが、魔法にはないのよ。ま、正確せいかくに言えばあるけれど……あってないようなものなの。だから、コツをつかみにくい」


 魔法って結構けっこう複雑ふくざつなのか……。ああ、でも、思い返せば、ランチを食べに行ったお店の店主てんしゅ、あの人は魔女見習いウイッチみならとか言ってたっけか。魔法は使えなさそうだったし、まだまだこの国の魔法レベルはそんなものなのだろう。

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