第46話 口論 〜可愛いからって何をしても許されると思えっ!〜

 目がおよいで、手がわなわなする。それを動揺どうようべないのであれば、一体いったい何が動揺なのか、それくらいウミは露骨ろこつあせっていた。

「す、す、す、す、好きじゃありませんよ……」


「う、う、う、う、うそだっ!! その反応は嘘だ!!!」


「う、う、う、う、嘘じゃありません!」


「そ、そ、そ、そ、それが嘘だ!」


「しょ、しょ、しょ、しょ、証拠しょうこはあるんですかっ!」


「さ、さ、さ、さ、さっき! さっき、そこの魔女ウィッチのおねえさんが言ってたじゃないかっ!」


「違います!」


「何がさっ!」


 会議室かいぎしつひろげられる新婚夫婦しんこんふうふ修羅場しゅらば、それをめにはいるように、魔女ウィッチことココム・ツィツラ教育大臣きょういくだいじんがバッと手をげた。


 夫婦の視線が、ココム教育大臣のほうながれると、

「まあまあ、結婚けっこんしたばかりで喧嘩けんかってのは良くないと思うよー」

 となだめるような一言ひとことくちにする魔女ウィッチ


 だがしかし、ぼくら夫婦は、わず9Fきゅうフレーム反応速度はんのうそくどで、

「誰が発端ほったんだと思っているんですかっ!」「あなたのせいでややこしくなったんですっ!」

 とかえす。これがかくゲーなら、この差し返し力で世界せかいだってれるだろう。


 ぼくの精神せいしんがもう少し成熟せいじゅくしていたら、ここで「はい、じゃあ、気を取りなおして、本題ほんだいに入りましょうか」ともと航路こうろかじを切れるのかもしれない。……が、ぼくはお子ちゃまで良い、大人があーだこーだ、関係ない。

「ウミ、本当のことを言って。魔王様のことが好きなの? ぼくよりも、魔王様のことが好きなの? どっちなのっ?!」


 真剣しんけんうと、ウミは人差ひとさゆびをつんつんとき合わせながら、極小ごくしょう声量せいりょうで言った。

「それは……もちろん、リクさ……駄目だめです……他のかたがいる前では……ずかしくて……言えません……」


 ノオオオオォォォォオオオォォオォォォォォォォォオオオオオォォォオオオオオオオオオッッッッ!!!!!!!!!


 可愛すぎるっ!!!! ジイィィィィイイイイザァス!!!!!!


 オオオオオオオオオオオオオオオ、マイッ、ガァッ!!!!!!!!!!!!!!


 ぼくの目の前に、女神めがみ降臨こうりんなさった!!!!!


 見つめ合う二人のかたわらで、ココム教育大臣は大きなため息を吐いた。

「『昔』の話だって言ってんじゃん……」

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