第44話 魔王 〜ファンなのはマズくない……?〜

 定刻通ていこくどおり、ココム・ツィツラ教育大臣きょういくだいじん会議室かいぎしつあらわれ、ほどなくしてミーティングが始まった……と言いたいところだけれど、実際じっさいは……。


 ココム教育大臣は、とんがり帽子ぼうし乱暴らんぼうほうり、ステッキも放り、マントまでも放った。

「あー、ちぃかれたぁー」

 ドスのいた声を出して、顔をテーブルせる魔女ウィッチさん。


 そんなだらけきった大臣を見たウミは、ためいきじりに言った。

「リクさんもつかれていますが、それでもこのミーティングはやりきってくださるのです。だらけていないで、やりますよ、ミーティング」


「えー。今さら何を話すんですか。私、あの日本に住んでたリクくんがぜーんぶ決めちゃって良いと思いますー」


「それも一理いちりありますね! ……で、でもっ! まずはあなたの意見いけんを聞きたいのです!」


「えー。じゃあ、意見はありませんって意見を出しますー」


却下きゃっかです!」


「えー、ケチー。モテないですよ?」


「モテな……そ、そんなことは瑣末さまつなことです。それよりも意見を聞きたいのです」


「もー。じゃあ、何に対する意見を言えばいいんですか」


 この魔女さんって、本当に大臣なのか……? もう少しこう、威厳いげんを感じさせてほしいというか……そう、鳥人ちょうじんのモバーシャ国防大臣こくぼうだいじんのようなオーラがあっても良いんじゃないだろうか……。いやしかし、あれはあれで威厳がありすぎるんだよなあ……。


 それと、ウミちゃん! 一理あるとか言っちゃ駄目だめでしょ! 皆んなで決めないとでしょ!


 ……というか、ミーティングの内容と全く関係かんけいけれど、ココム教育大臣とウミの二人は、随分ずいぶんなかが良さそうだ。


 とにもかくにも、ぼくが提案ていあんしたいことなんだ、ぼくからかないと!

「ココム教育大臣。ぼくが訊きたいのは、魔法まほうを上手く使って、この国の介護を——」

 ぼくが一番重要なことを口にしようとした時、

「あっ! 魔王様まおうさまにプレゼントわたすのわすれてたっ! 最悪っ!!」

 と唐突に感情をき出しにするココム教育大臣。


 魔王様……? プレゼント……?


 わけがわからず目を細めるばかりのぼくに、ウミはかたを落としながら教えてくれた。

「この世界には、魔王様がいるのです。リクさんもライトノベルを読んでらっしゃるので何となく想像そうぞうできると思いますが、魔王様は、創作そうさくのままのかたであり、想像のままの方です」


「……そ、そうなんだ。それはすごいや……。でも、プレゼントって……?」


「それは——」


 ウミが答えようとすると、またしても、

「魔王様のファンだから、プレゼントを渡したいの!」

 と口をはさむ魔女さん……。



 ……一国の大臣が魔王様のファンって、それ大丈夫なの……?

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