第40話 淘汰 〜生まれ変われるか〜

 ぼくの予想通よそうどおり、管理者はなるべくサービスに入らない方が良い、ということに対し、スワオンさんは苦虫にがむしつぶしたような顔をした。

「……お言葉ですが、それだけはできません。サービスの責任者せきにんしゃである私が、サービスに入らないわけにはいかないのです」


 スワオンさんの発言を受け、

「それ以外の方法はないのでしょうか……?」

 とウミが上目遣うわめづかいでぼくにいてくる。


 可愛い。めちゃ可愛い。ウミのモッフモフの耳を、モフモフモフモフ、モフモフリンッ! としたいところだけれど、ここはぼくも心をおににしないと駄目だめだ。


 ぼくは、すーっと息をい込んで、ふーっとき出した。

「サービスの責任者を、他に立てるのです。そうすれば、スワオンさんはサービスを回ることだけに集中しゅうちゅうしなくても良い。それをするなら、今がチャンスです。ご利用者がそこまで多くない今から、スワオンさんが一手いってになっている負荷ふか分散ぶんさんさせておくと、後々のちのち必ずいてきます」


「……しかし、まかせて良いものなのでしょうか?」


 しぼり出すように言ったスワオンさんの表情は、非常ひじょうけわしいものだった。


 そんなスワオンさんの言葉を、ウミが補足ほそくする。

部下ぶかに、これまで自分だけがやってきた業務ぎょうむわたして良いのか……それをなやんでいるのですね」


「はい……。私が不勉強ふべんきょうなので、ろくに教育きょういくもできていませんし……。サービスの質の確保かくほは、契約けいやく継続けいぞくするか切るかに直結ちょっけつすることなので、そこは私で考えたい気持ちはあります」


 ぼくだって伊達だてに介護士をやっていないんだ、スワオンさんの気持ちは痛いくらいわかる。

 でも、そのやり方は事業所と顧客こきゃく規模きぼが小さいからできているのだと、ぼくは思う。段階的だんかいてき成長せいちょう見据みすえているなら、規模の拡大きだいねらうなら、今のやり方ではきっと頭打あたまうちになる。会社は生き物だ、変化へんかをしていかなければ、非情ひじょうだけれど淘汰とうたされる。

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