第39話 仲介 〜ケアマネジャーとは〜

 ぼくは、ウミとスワオンさんの目を交互こうごに見てから、話を切り出した。

「色々話を聞いてわかった。ローレライ王国には、ケアマネジャーという職種しょくしゅ存在そんざいしない」


 銀色のつやめくかみでながら、ウミは不明点ふめいてんを口にした。

「……ケアマネジャー、ですか。初めて聞く職種ですが……何か介護サービスにおいて重要じゅうよう役割やくわりになっているのでしょうか?」


「サービスに関係かんけいするプロはれなく肝要かんようなのだけれど、ぼくの個人的こじんてき意見いけんを言えば、ケアマネジャーの重要度じゅうようどは他の職種にくらべて一つきん出ている……と思う。

 ケアマネジャーの仕事は、大雑把おおざっぱに言い表すなら……そうだね、ご利用者が使っているかくサービスのまとめ役……ってとこかな。ケアマネジャーがケアの全体の方針ほうしんを決めて、そこからサービス事業者別に各サービスの細かい計画けいかくを考えていくんだよね」


 まあ、抜きん出ていると言っても、それはいて一つえらぶならの話だ。やはり、それぞれにしかできないミッションがあって、一つでもうしなえば、最悪の場合、ご利用者の生活を守れなくなるだろう。

 それに、各サービスの計画に関して厳密げんみつに言うなれば、ケアマネジャーや他の職種、ご利用者本人、ご家族で一つのチームとなって決めていくのだけれど……。今は深くまだ切り込むとややこしくなるから、言及げんきゅうけて正解せいかいだっただろう。


 人狼じんろうのスワオンさんが、ケアマネジャーについて質問してきた。

「それでは、第38話で言っていた、事業所間じぎょうしょかん情報連携じょうほうれんけいは、ケアマネジャーが各職種のパイプとなって、必要な情報を共有きょうゆうしてくれるということでしょうか?」


 第38話って……やけにメタいな……。けれど、そう、そこははっきりさせておかないといけない。


半分はんぶん正解で、半分不正解ですね。ケアマネジャーが一番、ご利用者の各サービスの情報をにぎっているのは確かですし、その状態じょうたいのぞましいですが、だからといって、それら全てを全事業所に伝えていると、日がれてしまいます」


「……だとしたら、ケアマネジャーがこの国にいたとしても、リクさんの言う情報連携は充分じゅうぶんにできないのではないでしょうか?」


「おそらくできませんね、だけどそれは、ケアマネジャーだけが情報の共有きょうゆうで動くとなった場合です。……今から言うことは難儀なんぎなことですし、現場げんばの気持ちがわかるぼくから言いにくいことですが……ケアマネジャーをかいさずに、介護事業所こちらから直接ちょくせつ他サービス事業者と情報連携をすることも必要なんです。管理者かんりしゃは、スワオンさんは、なるべく介護サービスに入らないようにして、事業所間じぎょうしょかんのやり取りにある程度ていど注力ちゅうりょくした方が良いのです」


 拒否反応きょひはんのうしめすことはわかっていたけれど、ぼくの結論けつろんはこれだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る