第37話 意気 〜神の器とは〜

 フォロー下手べたなぼくのせいで、スワオンさんのテンションはだだ下がり……。そんな時こそウミの出番でばんだ。

 ウミは、ぼくのフォローのレベルが最底辺さいていへんであることに気付くやいなや、持ち前のブルジョアな笑顔でスワオンさんを元気にさせようとする。

 にぱっ。

「スワオンさん、過去かこは変わらないのです」


 女神めがみのような神々こうごうしい笑みを見たスワオンさんのひとみは、なみだくされていく。……ウミちゃんヤバすぎじゃない? 本当に神なんじゃない?


 スワオンさんを前向まえむきにさせようと、ウミはさらに続けた。

「過去は変わらない……それは、この国の介護の発展はってんおろそかにしてきた私にも言えることです。ですが、私たちには、あやまちをみとめる力が、今を変える力が、未来を変える力が、確かにあるのです!」


 ピカーンッ! ピカピカピカーンッ!


 ううっ! まぶしいっ! 前が見えないっ!

 ウミが笑顔をりまくたびに、一段いちだん、もう一段と、ひかかがやいていく! 何という威力いりょく!!


 ぶわわわーん。


 徐々じょじょに光がにぶくなっていき、ウミの姿すがたが見えてくる。


 すーん。


 そして、光は完全に消滅しょうめつした。

 なかから出てきたウミは、不安そうな表情をしている。

「こんなこと言っても、前向きになれないですよね……」


「なれます!」「なれるよっ!」


 ウミのうしろ向きな発言はつげんに、スワオンさんとぼくは、池にえさかれたこいのようないきおいで、食いつくように言った。


 むらがる鯉に目を丸くするウミ。

 そんなウミに、スワオンさんは、力こぶを作って、快活かいかつに言いはなった。

「ウミ様、ありがとうございます。アドバイスをしっかりと受け止めて、全て改善かいぜんしてみせます……!」


「良いですねっ! その意気いきですっ!」


 ウミは、グーを二つ見せて、微笑ほほええむ。


 え〜。萌えだ。これこそ極上ごくじょうの萌えだ。


 パチンパチンッ。


 萌えを堪能たんのうしたぼくは、えるためにほおたたいた。

「それでは、改善をするために、気になっていることを質問しつもんさせてください」


「はい、何でもお聞きください」


 そう言ったスワオンさんはもう、しっかりと前を向いていた。

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