第24話 懸念 〜フキャギャクテキ〜

「うーん……」

 ショコラ司法大臣しほうだいじんは、顔をしかめて、くるしそうにうなる。介護保険料を別途徴収べっとちょうしゅうするというぼくの提案ていあんが、この国のためになるのかどうか、真剣しんけん精査せいさしてくれているのだろう。


 会議室かいぎしつが重たい空気につつまれるなか、ここにきてようやく、魔女ウィッチ教育大臣きょういくだいじんが言葉をはっした。

「教育大臣のココム・ツィツラよ、よろしく。私は、リクくんの案に賛成さんせいね。ちょっと聞いたことがあるのだけれど、日本ってあの超高齢化ちょうこうれいか社会しゃかいの日本でしょう?」


 その問いにぼくは首肯しゅこうで返す。すると。


「その国の介護従事者かいごじゅうじしゃが言ってるんだから、やってみる価値かちはあるんじゃないかしら」


 ギラッ。


 冒頭ぼうとうのトラブル以降いこう静観せいかんしていた鳥人ちょうじんのモバーシャ国防大臣こくぼうだいじんが、ココム教育大臣をにらみつける。

楽観的らっかんてきだな。リクが言ってることは、ふた返事へんじで決められるようなことじゃない。実行じっこうすれば、国民からの反発はんぱつもある、コストもかかる。それに、実質じっしつ不可逆ふかぎゃくだ」


 半分、説教せっきょうのような口ぶりに、

「やだ、こわ〜いっ!」

 とまゆをひそめるココム教育大臣。


 二人がやりとりをしているすきに、ぼくはウミにこっそりとく。

「ねえ、ウミ」


「どうしましたか」


「フキャギャクって何?」


 ぼくの勘違かんちがいが面白おもしろかったのか、ふふふと小さく笑うウミ。

「一度かたちが変わったら、もう元通もとどおりにはならない。それを不可逆ふかぎゃくというのです。モバーシャ国防大臣は、介護保険料を徴収する仕組しくみにしてしまったら、もう今みたいな全てを国民負担こくみんふたんにするというのは難しい。そう言いたいのだと思います」


「な、なるほど。ありがとう」


 ぼくは、ケモ耳をモフりたい気持ちを抑制よくせいして、とある閣僚かくりょうの方に向き直った。

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