第23話 聴取 〜意見はいかに!?〜

「ああ、それは却下きゃっかですね」

 介護料金のほとんどを国が負担ふたんするというぼくの提案は、司法大臣しほうだいじん子犬の妖精クー・シーによって一蹴いっしゅうされてしまう。


 否定的ひていてき意見いけんが出ることは、ぼくだってひゃく承知しょうちだ。肝心かんじんなのは、そういった発言にカッカするのではなく、そう考える理由や根拠こんきょを聞くことだ。


「却下ですか。えっと……」


「私は、ショコラ・ショオンと言います。お好きにお呼びください」


「では、ショコラ司法大臣。却下の理由を聞かせてもらえますか?」


 ショコラ司法大臣の目を見つめながら、ぼくがくと。


簡単かんたんですよ。もしも介護料金の一部を国が負担するとなれば、今すぐには算出さんしゅつできませんが、莫大ばくだい金額きんがくになるということは、赤ちゃんにでもわかるでしょう」


 ぼくを嘲笑あざわらうように答えるショコラ司法大臣。

 いやしかし、とんでもない金額になる、というのは確かだ。……赤ちゃんにはわからないだろうが。


 ともかく、司法大臣の意見はわかった。わかったけれど、ぼくは思う。この国は、そんな悠長ゆうちょうなことを言っていられるのだろうか、と。


 ぼくが新たな提案をしようとしたところ、ここで初めて黒い子猫の妖精ケット・ルーが口を開いた。


「ミチェ・グラルートという者です、よろしく。私は、介護にメスを入れるのは賛成さんせいというか、肯定的こうていてきです。だけども、現行げんこう歳入さいにゅう歳出さいしゅつまえると、介護料金を国が一部負担することは困難こんなんですね。まあ、何らかの手段しゅだんで歳入を増やす、ということならまた話は変わってきますが……」


 賛の意見が上がると、それに続いたのは厚生労働こうせいろうどう大臣だいじんのフェアリー。

もうおくれました、厚生労働大臣のケラルラ・スーです。私も基本的には介護改革に賛同さんどうします。少子高齢化しょうしこうれいかかつ働き手が不足ふそくしている現状を打ちやぶらなければ、この国は崩壊ほうかいするやもしれません。ですが、良策りょうさくこうじることができていない、というのが正直なところです」


 よし! 風向かざむきが変化しはじめたこの瞬間しゅんかんがチャンスだ。


 ぼくは、誰にも見つからないように、つくえの下でにぎこぶしを作った。

医療保険いりょうほけんと同じように、介護保険制度かいごほけんせいど策定さくていしませんか? 保険対象者ほけんたいしょうしゃとなる国民から、介護保険料かいごほけんりょう徴収ちょうしゅうするのです」


 口にしてから確信した。この言葉を皮切かわきりに、議論ぎろん加速かそくしていく——。

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