第22話 反応 〜子犬とフェアリー〜

 パチンッ!


 ぼくは、手をたたいて言った。

「とにもかくにも、ぼくはローレライ王国の介護を変えるために、別の世界から召喚されました。そして、ぼくが頑張がんばった結果、みなさんにみとめられたらと、そう思っています」


 ぼくの言葉に首肯しゅこうしてくれる者も多くいたけれど、相変あいかわらずモバーシャ国防大臣こくぼうだいじんはぼくをにらんでいた。

 でもきっと、首をたてってくれている閣僚かくりょうも、内心ないしんはどう考えているか……。


 いやしかし。ぼくが皆んなの気持ちを推測すいそくしたところで、一気に距離きょりちぢめるさくなんてありはしないんだ。だから今は、会議を前に進めることだけ、それだけを考えよう。

 ……あ、ちなみにですが、読者様の中で、異世界の方と一気に仲良くなる方法、ごぞんじの方がいらっしゃいましたら、いつでも結構ですのでご教示きょうじいただけないでしょうか? 何卒なにとぞよろしくお願い申し上げます。


「次は、本題ほんだいですね」


 そう言って、ウミがケモ耳をピクッさせる。


 ぼくは、ウミちゃんマジ可愛い、ふざけてるくらい可愛い、と思いつつも、本題に入ることにした。

「うん、ここからが肝要かんようなんだ。ぼくが閣僚かくりょうみなさんにきたかったことは、何をかくそう、介護料金の話です」


 この話題に大きなリアクションをしめしたのは、てのひらおさまってしまうほどのサイズしかないフェアリー——厚生労働こうせいろうどう大臣だいじんだった。

「介護料金、ですか……」


「ほう」

 厚生労働大臣のつぶやきに続くようにして、興味きょうみをアウトプットしたのは、白い子犬ちゃん。司法大臣しほうだいじんだ。


 反応はんのうに差はあるけれど、ぼくの予想よそうではこの二名の大臣が何かリアクションを取ると思っていた。厚生労働大臣は介護・福祉かいご・ふくしに、司法大臣は法的ほうてきなところに、精通せいつうしているからだ。

 とどのつまり、ぼくは今から専門家せんもんかと、それぞれの専門分野せんもんぶんやのことを話すのだ。一瞬いっしゅん論破ろんぱされそう……。


 ……論破されそうだけれど、されたらされたで、また一からかんがえを構築こうちくするだけだ!!


 ぼくは、大胸筋だいきょうきんって言った。

「国民が介護料金を全額負担ぜんがくふたんしていますが、これから国が大幅おおはば負担するというのはどうでしょうか?!?!?!!!!」


 デデデンッ!!!!!!!


 ぼくの背後はいごに、発言を強調きょうちょうする文字がかびがった気がした。

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