第21話 羞恥 〜モフモフしてぇえっ!!!!!〜

 ウミは、ぼくの顔を見てうなずき、

「リクさん。では、簡単に自己紹介じこしょうかいからお願いします」

 

 鳥人ちょうじんのモバーシャ国防大臣こくぼうだいじんからのいかりを、ウミがいさめてくれたところで、会議はリスタートとなったのだ。ぼくもシャキっとするぞ!


「繰り返しになりますが、ぼくの名前はリクです。この世界とは別の世界の日本という場所からやってきました。いえ、やってきたというか、国王であるヴィシュヌさんが召喚しょうかんしてくれました。

 日本では、介護の仕事をやっていて、介護福祉士かいごふくししという国家資格こっかしかくを持っています。……とは言っても、ぼくは学者がくしゃでもなければ、事業主じぎょうぬしでもないです。たんにいち介護職員というだけでした。

 えっと……話が前後しますが、ぼくが召喚された理由は三つありまして、一つはこの国の介護を変えるべく——」


 召喚された理由、それをべようとしたところで、ウミが胸の前で両手をクロスさせる。×マークを作ったのだ。

 特に口にしてはならないような、機密事項きみつじこうでもないと思うけれど、何かあるのだろうか。

「どうかした……?」


 たまらず直接ちょくせつくと、ウミは閣僚五名かくりょうごめいには聞こえないトーンで話し始めた。

「どうもこうも……私のタイプのリクさんをお呼び立てした、という事実はあまり言ってほしくありません……」


「……ん、どういうこと? 結婚したのだから、たがいに好き同士どうしということは、ここにいる閣僚だけじゃなくて、国民もわかっていることだと思うけれど……」


「それはそうですが……それとこれとは別というかですね……」


 そう言って、ウミは人差し指をつんつんと突き合わせる。会議中だけれど、もじもじしているウミも信じられないくらい可愛いと感じる。


 ……でもまあ、言わんとしていることはわかった。いくら鈍感どんかんなぼくでもわかった。たとえそれが周知しゅうちの事実であったとしても、愛だの恋だの、好き同士だの、改めて他者たしゃの前で口にしてほしくない。ウミが気にしているのはそんなところだろう。


 もしぼくの推測すいそくが正しいのなら……ウミちゃん可愛すぎませんかね!?!?

 読者様はどう思われます!?!?

 最高じゃないですか?!?!?

 異世界バンザイじゃないですか?!?!?!?!?

 鼻血はなぢ出るどころのさわぎじゃなくないですか?!?!?!?!?


 ……。


 おっと、失礼しました。ついつい取り乱してしまいました。


 ここは一度深呼吸をして。


 スーハ―、スゥーハァー……。


 やっぱ冷静になるなんて無理だ! 今すぐ会議を中断ちゅうだんして、ウミのモッフモフの耳をモフモフしてぇえっ!!!!

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