第20話 会議 〜建設的な時間に〜

 静謐せいひつ雰囲気ふんいき、と言い表すのが一番適当てきとうなのかもしれない。そう感じるほど、会議室内はどこか独特どくとくな空気につつまれていた。


 会議開始をげたぼくは、淡々たんたんと続けた。

司会しかいわたくし、リクがつとめます、よろしくお願いします。本日、みなさんに集まっていただいたのは、ぼくの自己紹介じこしょうかいねた介護の現状げんじょうに対する意見交換いけんこうかんをしたかったからです。じゃあ、まずはぼくの——」


「待った」


 自己紹介をさえぎってきたのは、屈強くっきょうな肉体をした鳥人間——国防大臣こくぼうだいじんだった。ぼくとちょうど対面たいめん座席ざせきに腰かけている。


 国防大臣は、腕組うでぐみをしながら、強い口調くちょうで言った。


「他のやつらはどうか知らねえが、俺はあんたのことを信用しんようしていない。当たり前だろう? いきなりローレライ王国にやってきて、ウミ様と結婚をしちまうくらいだ。いや、それだけじゃない。こうやって閣僚かくりょうの俺たちを呼びつけて、国の方針ほうしん口出くちだししようとしている。これは邪推じゃすいかもしれねえが、脅迫きょうはくまがいなことをしてウミ様をあやつっているかもしれない。そうとすら思えてくるぜ」


 バンッ!!!!!


 国防大臣がつらつらとぼくへの疑念ぎねんべるのを待ってから、ウミは机をたたいて立ち上がった。

「モバーシャ国防大臣! ローレライ王国のとりでであるあなたでも、リクさんを侮辱ぶじょくすることは看過かんかできません」


 予期よきせぬ叱責しっせきだったのか、モバーシャ国防大臣は狼狽うろたえながら、必死に弁明べんめいしようとする。

「しかし! 俺は、ウミ様の身をあんじて——」


「本当に私を心配してくれてのことならうれしくもありますが、残念ながら誰かにまれたり、そそのかされたりするほどやわな女ではありません」


「し、失礼しました……」


 焦燥感しょうそうかんしにしながら、モバーシャ国防大臣は頭を下げた。


 モバーシャ国防大臣マジ怖え……と思ったけれど。

 ウミの方がその百倍、いや一千倍いっせんばいは怖え!!!!!!!!!!!!


 ふっと息を吐いてから、ウミはすわり直す。

「リクさん、続けてください」


「……うん、わかった」


 ウミは、ぼくを守るために、会議を成立せいりつさせるために、声を上げてくれたのだろう。だけど、強気つよきにいくのはぼくの役目やくめだし、何よりモバーシャ国防大臣がぼくを警戒けいかいするのも無理はない。


 ただ、ウミの行動には助かった。何故なら、会議というものは中立ちゅうりつな者で構成こうせいされなければ、建設的けんせつてきな意見は出にくいからだ。


 さあ、仕切しきり直しといこうか。

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