第18話 食卓 〜これがブルジョアってやつか〜

 ローレライ王国のローレライじょうというエグすぎる建造物けんぞうぶつは、三階建さんかいだてになっているそうで、そしてどうやらエグすぎるダイニングは二階にあるらしい。……らしい、というかあった。そのダイニングとやらが、ぼくの眼前がんぜんにある。あるのだけれど……。


 ……。


 エグゥゥゥゥゥウウウウゥゥウッゥゥウゥゥゥゥウウウウウッ!!!!!!

 デカスギィィイイィィィィィィイイイイイィィィィィイィィッ!!!!!!!!!!!!


 ぼくは、その広さに唖然あぜんとしてしまう。

 もはやどこにでもがっているシャンデリア。

 チョー縦長たてながのテーブル。その上にはオフホワイトのテーブルクロス。

 木製もくせい椅子いすは、背もたれがガッチリとしているタイプだ。

 ところどころに配置はいちされたはしらあいだには、マットな赤の壁紙かべがみが。

 そして何より、メイド服を身にまとったメイドさんたちが、テーブルと平行へいこう整列せいれつしている。耳が長さが特徴的とくちょうてきだ、おそらくエルフの方々なのだろう。こんなところでお目にかかれるなんて、いやはや、圧巻あっかんだ。


 ぼくの住んでいた人間界なら、このダイニングを用意するだけでも数千万はくだらないだろう。


 口がパッカーンと開いたぼくを見て、ウミがふふふと笑いながら言った。


「リクさんのおうちよりは多少大きいでしょうか?」


「いやいやいやいや。多少じゃないよ、ジョークを抜きにして十倍以上でかいよ。でかすぎて心臓バックバクだよ。よもやバックレそうだよ」


「なるべくバックレないでください!」


「なるべくなんだ?!?!!」


 新婚しんこん即興そっきょう漫才まんざい披露ひろうした後、ぼくはすかさずメイドさんたちに挨拶あいさつをした。


「おはようございます。ぼくは、日本というところから来たリクともうします。いきなり来て、いきなり結婚して、いきなり住みついて、いきなり朝食を食べようとしているのだから、ぼくのことを良く感じていないはずだと思っています」


 メイドさんたちは、ぼくの言葉にかぶりを振った。でもそれは、きっと建前たてまえだ。この世界の方は絶対、ぼくのことが不審者ふしんしゃに見えると思う。不審者ならまだマシだ、侵略者インベーダー認識にんしきする者がいてもおかしくはないのだから。


 だからこそ、ぼくは存在を証明しょうめいしなければならない。ぼくがこの国にいていい理由を……いや、いなきゃならない理由を、証明しなければならない。


 ぼくは、ウミに手を差し出した。ぼくの手を不思議そうに見つめてから、ウミは何かを察したのか手をにぎり返す。


「ぼくたちが介護革命を起こして、この国を変える。結果でしめすことができたら、ぼくを信頼してほしいです。これからどうぞよろしくお願いします!」


「わ、私からも、よろしくお願いします!」


 二人で頭を下げると、メイドさんたちから拍手はくしゅき起こった。

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