第10話 課題 〜介護のちょっと深いお話〜

 ピクッ。ピクピクッ。


 モフモフな猫耳が可愛く動く。

 その猫耳のぬしであるウミは言った。


「日本は素晴らしい国です。我が国と似た課題かだい直面ちょくめんしていますが、色んな角度からアプローチして、解決かいけつに向けて一歩ずつ進んでいます。それに比べて、この国では私の力不足、知識ちしき不足で、足踏あしぶみしているというのが正直なところなのです」


「日本のことに関してはまあ、確かに、言えてるかも。完全に解決とまではいかなくとも、日本は頑張っていると思う。見識者けんしきしゃも多いし、研究けんきゅうも進んでいるし。近年きんねんの日本介護の傾向けいこうとして、蓄積ちくせきした介護データをもとに、科学的根拠かがくてきこんきょもとづく介護が推進すいしんされてきているんだ。だから、これからもっと合理的ごうりてきな介護が始まるはずだね」


 ぼくがそう言うと、ウミは目を丸くした。


「凄いです……。科学的根拠に基づいた介護、ですか……」


「凄いよね。もちろんぼくじゃなくて、考えた人がね。けれど何故、合理的な介護が着目ちゃくもくされてきたか、ウミはわかる?」


「合理性に着目した理由ですか……。うーん……。やはり、介護を受ける方にとって、より意味のある介護であるべきだから……でしょうか?」


「それも正解。何ごとも悪いより良いやり方を目指すべきだからね。でも、それに負けないくらい深刻しんこくな課題があるんだ。答えは、その課題に関連かんれんすること」


「うーん……」


 こめかみを白く細い手で押さえて、考えをまとめようとしているウミ。


 何をしても壊滅的かいめつてきに可愛いんだし、もう間違ったことを答えても、それが正解になるよね、うん。もはや存在自体が正解だよね、うん。


 そしてぼくの存在は不正解……ううっ、自分で言っていてつらくなってきた……。


 ……さてさて、もう一つの答えを言おうじゃないか。

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