第8話 談笑 〜早口で語ります〜

「しっかし、ウミがヲタだったなんて……」

 ぼくがつぶやくように言うと、ウミは両手を広げて一回転してみせた。

「だって、アニメ文化、最高じゃないですかーっ!」


 満面まんめんの笑みのウミ。それは、胸がけそうになるくらい、破壊力はかいりょくのある笑みだった。


 可愛い。いや、可愛すぎじゃないか?

 下手したら逮捕たいほされるんじゃないか?

 まさに、犯罪級はんざいきゅうのルックス……ッ!!!


 繰り返しになって読者様には申し訳ないけれど……。

 こんな可愛い女の子と結婚できるなんて、最高じゃないかーっ!


 ……おっと。取りみだしてしまった。

 せっかく、ウミと趣味が合うんだ。ここで話さないでいつ話すんだ!

 イッツ、ヲタトーク!!!!


「ウミはどんなアニメが好きなの?」


「アニメですか、うーん……そうですね……」


 あごに手を当てて考えるウミ。これはこれでベリーベリーキュートだ!

 何をしてもさまになる。何をしても絵になる。

 まるで王女様! ……って、ウミは本物の王女様だった。失礼失礼。


 しばらくうなったすえに、ウミは言った。


「私は、全部好きです!」


「ぜ、全部?!」


「アニメ最高っ! ですからねっ! あっ、でも、グロテスクな描写びょうしゃのあるアニメは苦手かもしれません……」


「それは大丈夫、得意な人の方が珍しいからね。マイノリティなジャンルだと思う。ぼくも好きとは言えないけれど、好きになる人の気持ちはわかるかな」


「深いですね……」


「深くない深くない。ちなみにぼくは、青春ラブコメ系が好きかな」


「わかりますっ! 最初は相性最悪あいしょうさいあくの二人が、授業や学校行事、部活などを通じて、徐々じょじょ距離きょりちぢめていくんですが、そのままくっつくかと思ったら話はそんなに単純じゃなくて、いさかいなんかもあって、そういったすいもあまいもをて、精神が成熟せいじゅくして告白っ! そして、ハッピーエンドっ! みたいなパターンっ! 素敵ですよねえ……。二人が付き合うことになったら、数々の努力がむくわれて読者も嬉しいっ……ですが、どこか物語が完結に向かうさみしさや、青春もいつかは終わるというせつなさが心の奥底おくそこからげてくるんですよね。でもそれが、それこそが、青春ラブコメの良さだなって」


「深いっ! 深すぎるくらい深いっ!」


 ぼくが反射的にそう言うと、ウミはハッとした表情をして、


「すっ、すみませんっ!! つい夢中むちゅうになってしまって……」


 と言った。


 いやいやいやいや。夢中で結構!

 アニメを必死ひっしに語るウミもまた、ぼくをきつけさせる少女のような快活かいかつさがある。


 声を大にした言いたい。


 ウミちゃんLOVEラヴ、と。

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