第6話 入城 〜慣れるまで3年はかかる〜

 ——青い光は、常軌じょうきいっするスピードで、青い空をけていく。


 それは、立派りっぱ建造物けんぞうぶつ——お城に直撃ちょくげきしそうになるも、城壁じょうへきの前で速度をゆるめた。


 リク、ウミ、ヴィシュヌたちは、最上階さいじょうかいに位置する部屋の窓の内側へ、ゆっくりとり立った。


「うわぁ……!」


 そこで、ぼくは感動のあまり、思わず息をらしてしまった。


 ぼくの目の前に広がっていたのは、とにかく全てがふざけているのかと思うくらいスケールの大きいものばかり。

 

 天を見上げればきらびやかシャンデリア、地を見れば、深紅しんくのカーペット。

 部屋自体は縦長たてながで、おそらく廊下につながっているであろう扉は、どんな生き物でも出入りできるよう、これまたビッグなつくりだ。


 扉の対面たいめん——部屋の奥には、黄金おうごん椅子いすがある。

 おそらくそれは、国王のものだろう。見た目だけじゃない、格式高かくしきだかさを感じさられるオーラが存在している。


 一般人いっばんじんのぼくには、本来ほんらい手が届かないたぐいの世界。

 そして改めて思う。


 ぼくは、この国の王女様と……本当に結婚するのかっ!??!!??????!?


 緊張きんちょうで何も話さないぼくを、ウミはやわらかな笑みでほぐしてくれる。


「びっくりしますよね……。私も、物心ものごころがついたころから、自身の置かれている環境かんきょうに思うところはありましたから。でも、こういうものはれです」


「慣れ、かあ……」


 正直、心境しんきょうとしては、楽しみたいというのものあるけれど、いやしかしどこまでいっても慣れないんじゃないかというあせりもある。


 ぼくは、


 ぼくらは、


 うまく、やっていけるのだろうか——。

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