第2話 結婚 〜異世界でゴールイン〜

 ぐわん、ぐわん、ぐわん……。

 はっ!

 

 目が覚めると、ぼくは知らない世界の、知らない草原で大の字に寝転がっていた。


 ここは一体……。


「やはり、この魔法で良かったんじゃのう!」


 突然、しぶみのある男性の声が聞こえ、ぼくは立ち上がりった。


 すると、そこにいたのは、ツルツルの頭で、顎になが〜い髭を生やした老人がいた。そしてその隣には、純白のドレス、猫耳、肩口かたぐちまでびた銀髪の三拍子さんびょうしが揃った、端正たんせいな顔立ちの美少女が立っている。

 

 老人は、くの字に曲がった腰を叩きながら、

「名を何と申す」

 と質問をしてきた。


 ぼくは戸惑いながらも、これは『異世界転移』というやつか? と察することができた。


「ぼくは、リク。お爺さんと……そこの女の子は?」


「ワシは、ヴィシュヌ・コバルトじゃ。この娘は——」


 ヴィシュヌさんが少女を紹介しようとすると、少女が自ら挨拶してきた。

「ウミ・コバルトです! ウミと呼んでください。それと、この度はわざわざ来てくれて……じゃないですね。突然連れてきてしまってごめんなさい。……リクさんは、私たちの言葉がわかりますか?」


 可愛いなあと呑気のんきなことを考えていたぼくも、異世界らしき場所の方々とコミュニケーションがとれていることに驚いた。


 普通だったら、こういうのって魔法とかで、しゃべれるようになった! とかじゃないのかな。


 と、ともかく!


「うん、わかるよ。ヴィシュヌさんの言葉も、ウ……ウミの言葉もわかる」


「それはそれはっ! 良かったです! 召喚魔法に続いて、コミュニケーション魔法も成功しただなんて! お父様、見事成功ですね!」


 テンションが高いウミも可愛い。


 ヴィシュヌさんは、奇跡のような可愛さのウミに見惚みとれることなく、顎髭あごひげでながら、

「ワシの魔法はやはり一級品じゃな」

 と笑った。


 なるほど、もう既にコミュニケーションがとれる魔法はかけてあったわけか。


 よし、言葉が通じるなら話は早い。ここに来てまだ一分も満たないぼくだけれど、星の数ほど疑問が湧いているのだ。訊くことを訊かないと。


「あのー。ここって、異世界……ですよね?」


「はい! リクさんの住まれていた世界とは全く別の世界、要するに異世界にございます! この自然豊かな帝国の名は、ローレライ王国と言います!」


 肩口かたぐちまですらっと伸びた銀髪。絵になるとはこのことなんだろう、可愛すぎる……!


 そんな可愛さ満点のウミに、ぼくは一番気になっていたことを訊いてみた。


「ところで、ウミたちはどうしてぼくをここに召喚したの?」


 ぼくが疑問を投げかけると、恥ずかしそうに頬を赤らめるウミ。そしてウミは、もじもじしながら、衝撃しょうげきの一言を口にする。


「……けっ、結婚してください」

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