第9話 カレー爆弾
「keiさんが袋の中で動き出したんです。異変に気づき戦う準備をしていたのでしょうか?」
引き続きさめです。
そうkeiさんは秘密の沼に落ちてしまったんです!
keiさんが袋の中で暴れるものだから、オサキさんの首から下げられた袋が大きく揺れだしたそうです。
さらに四方から吹き付ける突風と、予期しなかった大きな波動。
オサキさんがバランスを崩した瞬間、袋をつないていた紐が強く引っ張られて切れてしまいました。
たぶん、keiさんは目が覚めておしっこに行きたくなり、袋の中で暴れていたんだと思います。
「keiさんを追っかけたのですが間に合いませんでした。かたじけない!」
「keiさんなら大丈夫だと思います。飛べるようにもなっていますし、5mの新雪ですから...」
「早急に助け出す手だてを考えなくてはなりませぬな。」
公魚湖の湖岸の「秘密の沼登山道入口」に吾妻きつねさんたちが集まっています。
オサキさんは妖気の流出を食い止めている吾妻狐さんたちの労をねぎらい、この先の指示を出しています。
やっぱり、さめはkeiさんが心配です。
さめはkeiさんをマンボウのような不思議な人だと思っていました。
マンボウのようにのんびりしているのに、ちゃんと生きています。
でも、それはマンボウさんに失礼な想像でした。
のんびりしているマンボウさんさんは、何万個の卵から生き残ったひとりなのです。
keiさんはそんな数奇な運命の人じゃありません。
人間だから、日本人だから、生き残れているのでしょう。
心配としているといっても言っても、使い魔と魔法使いは一応つながっています。
大きな危険が差し迫ればさめに気配が伝わってくるはずです。
たぶん、keiさんはいつものように大丈夫です。
「さめ殿、いったん丸山に戻りましょう。」
オサキさんは吾妻きつねさんたちに指示を出し終えたようです。
「さめ様、カレーをどうぞお召し上がりください。」
丸山に戻ると、子ぎつね君が朝食を持ってきてくれました。
カレーはさめが起きる頃には出来上がっていました。
その時はkeiさんが、まだ寝ていたので食べないで出かけたのです。
keiさんを起こして、ご飯を食べさせてから出かければ良かったと、さめは後悔しました。
無事を信じているけれど、きっとお腹を空かせてるとおもいます。
keiさんはお腹を空かせると、血糖値が下がり自暴自棄になって縮こまってしまうのです。
「keiさんはお腹を空かせているでしょうね。」
オサキさんがポツリとつぶやきます。さめと同じことを考えているようです。
「keiさんはカレーが好き。と、きつねたちから聞いていたものですから、作らせたのですが...」
「きつねさんたちは、なんでkeiさんがカレー好きだと思ったんでしょう?」
オサキさんはぼんやり遠くを見つめてカレーを食べようとしません。
きっと責任を感じてるんだと思います。
「きつねたちは、keiさんがよくカレーを作っている。と申しておりました。」
それはちょっと違うんです。
「"かやっち"という、特にカレー好きのバイトさんのために作ってたんだと思いますよ。」
そうそう、カレーを食べると100人力のバイトさんがいました。
おもしろがってkeiさんは毎週カレーを作っていました。
おでんカレーとか訳のわからないものばかりでしたが(;^_^
「それにカレーはみんなが喜びますから、さめもkeiさんのカレーが好きです。」
けっこうkeiさんのカレーはおいしいと思います。
玉ねぎの水分でカレーを作っていました。
その時によってトマトやリンゴも使っていたり。
とても手間をかけ工夫(冒険?)をかさね、keiさんは懸命にカレーを仕込んでいました。
ところが....
「それではkeiさんはカレーを好きじゃないんですか?」と、オサキさんは不思議そうな顔をしています
「嫌いではないと思いますが、keiさんは定食屋さんの子供だったので、カレーは食べ飽きているそうです。」
さめもやっぱり、keiさんがお腹を空かせていると思うと食が進みません。
「でも、きっと喜ぶと思いますよ。たまには自分が作ったカレーじゃないのが食べたい♪なんて、よく言っていましたから。」
「それは良かった、きつねたちも作ったかいがあります。」
さめは少々余計なことを言ってしまったかもしれません。
「さめ様、オサキ様、カレーをタッパにいれて空から落としてあげてはいかがですか、カレーはたくさんありますので。」
「カレーですから、タッパの中で混ざり合ってしまっても困りませんね。 」
よし!といった様子でオサキさんはノリ気です。
「あつ、カレーとご飯が混ざらない様に分けてください。見た目がぐちゃぐちゃだとkeiさん食べませんので...」
「さすがkeiさんは、我々のようにはいかぬのですね。きつねたち、さっそく用意しなさい。 」
いや面倒な性格なだけです。
子ぎつね君が竹を2つに割ったお皿と蓋、カレーを入れる竹の節をくりぬいた筒のようなものを持ってきました。
「よくできたな。 」
オサキさんは子ぎつねを誉めてやりました。
「早くそれを何個か用意しなさい。カレーとご飯を詰め込んだら温めなおしなさい。 」
「サメ達も早く食べて出かける準備をしましょう。」
カレーライス投下作戦です
keiさんは本当に世話の焼けるB級魔法使いです。
きつねさん達は50個ものカレーのセットを用意してくれました。
竹の中に収められたカレーやご飯を火の近くで温めなおして、クマザサで巻いて保温している様子です。
keiさんのためにそこまでする必要もないような気がするのですが...?
「ではオサキさん!きつねさん達が用意してくれたカレー爆弾をkeiさんに投下しにいきましょう。 」
「爆弾? 」
公魚湖の「秘密の沼登山道入口」辺りには、妖力の怪の火が飛び交っています。
秘密の沼からたくさんの怪の火が飛んできます。
きつねたち数匹が集まって大きな妖怪の火を打ち返しています。
「さめ殿、どの辺に落としたら良いでしょうか? 」
ちょうど谷間の真ん中のあたりから休憩舎に向かって左右に落としていったら良いのではないでしょうか。 」
雲も渦を巻き、風が吹き荒れていましたから、 keiさんがどこに落ちたのか見当がつかないのです
オサキさんは右へ左へ蛇行しながら休憩舎のほうに向かって飛んでいきます
さめはオサキさんにブラ下げられたカレー爆弾の紐を切って、どんどんと投下していきますよ。
「 keiさんが気がついてくれれば良いのですが。 」
オサキさんは心配そうです。
「 keiさんは好奇心が強いですから、ものめずらしそうな顔をして近づいてくると思いますよ。 」
さめはカレー爆弾がkeiさんの頭にぶつかってしまうんじゃないかと、ちょっと心配です。
「のんびりしてますからw」
オサキさんとさめは全部のカレー爆弾を投下し登山道入り口に戻りました。
ここにはたくさんの吾妻きつねさん達が集まっています。
どうやら妖怪たちの妖火に当たって怪我をしている者もいるみたいです。
オサキさんはみんなに声をかけて励ましています。
オサキさんは見た目にものすごく強面なんだけれど、みんなを見る目は労をねぎらい優しく微笑んでいます。
「オサキ様、妖怪たちの攻撃がおさまりました。 」
おどろいたことに辺りは物静かになり、あれほど飛び交っていた妖怪の火は1つの見られません。
「いったいどうしたのでしょう? 」
さめは心当たりを探りました。
ひょっとしたらカレー爆弾かもしれません!
「カレーはkeiさんに届かず妖怪たちに食べられてしまっているのでは?」
「さめ殿、それはないと思います。 」
まさかkeiさんの身に何かが起きているのでしょうか?
「もしかしてkeiさんがとらわれ、何かされているということですか?」
まさかと思うけれど、さめはkeiさんが人質として使われるんではないかな。とまじめに心配になりました。
「さめ殿、とにかく様子を見に行ってみましょう。 」
「拷問なんて受けていなければ良いのですが、 keiさんを拷問して叩いても埃すら出てこないですし、かわいそうなだけです。
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