第6話 九尾の狐

空洞の奥に入っていくと、"きゅっぴ"の大きな体が横たわっていまった。

お疲れの様子。

「ああkeiさん、よくいらっしゃいました。こんな姿で申し訳ありません。」

「"きゅっぴ"休んでてぇ~お疲れの様子。」

さめに"きゅっぴ"を紹介してあげようと思ったのね

でも、さめは目が大きくなってるし、お喉に何か詰まらせてお話が出来ないし、困っているみたいだよ。

飴でも飲み込んだのかしら~?

背びれの後ろを叩いてあげた!

「私はみんなを集めるために、少々力を使い過ぎました。」

「"きゅっぴ"はどうしてみんなを集めたの?」

"きゅっぴ"はあげていた顔を腕に寝かせて話はじめました。

どうやら猫魔王は食べ物を奪ったり、猫をつれさらったりしてるだけではないようです。

「雄国沼に封印されていた魔物達を、猫魔王は目覚めさせようとしているようです。」

魔物ですかぁ~(^^;

「猫魔王の悪行を阻止しようと、きつね達を集めたのです。」

"きゅっぴ"はふー。って息をはくと、目をつむりました。

魔物さんたちですか~

やっぱり温泉に入ってお家に帰れば良かった。

「keiさんはどうして丸山ゲレンデにいたんですか?」

"きゅっぴ"の目が再び開きまったよ。

「もちろん、猫魔王の様子を調べに来たんです!」

「やはりそうでしたか、明るいうちからkeiさんのお姿をお見受けしていたんですが、こちらにお越しいただく手段がなくて、夜までお持ちいただきました。」

「猫魔王のいたずらを許しておけず、急いできたよ!」

あっ!さめが何か言いたげなのね。

でも、顎が外れちゃったようなお口で、うまくしゃべれないみたい。

「うじょじゅき~」

なぁ~にぃ??

「おお、あなたがkeiさんの使い魔のさめ殿ですな!」

さめを"きゅっぴ"の前に出してあげた。

なんかさめってば、ぐちゃぐちゃになってる。

どうしちゃったんだろう?

「keiさん、さめ殿は私のことを知っていらっしゃるんですか?」

あっ!

「さめてば、"きゅっぴ"が怖いんでしょ~。」

「けけけっkeiさん、ごじらさまはどちらさまですが~」

うふふっさめてば震えているよ。

「さめ殿、私はkeiさんにお世話になっている九尾の狐です。警戒なさらないでください。こんな姿ですが私は吉兆の神使です。」


しばらくすると、さめも落ち着いてきたみたい。

「keiさま、さめさま、お酒を飲まれますか?」

こぎつねくんがお酒とイワナの干物を持ってきてくれたくれまった。

「で、なんでkeiさんがこんなりっぱな神使様と知り合いなんですか?」

きゅっぴは優しいほほえみを浮かべながら、ゆったりと話してくれるのね。

「keiさんはいつも山に来る度に、わが社にお供えものをしてくださるのです。」

「ほらお弁当のお稲荷さんやおにぎりを置いてきてるじゃん。」

(さめ:食べきらなくて持って帰るのも面倒だから置いてきてると思ってましたが?)

「土地を見守る神と言うものは、身近な信仰がなくては存在できないものです。」

keiっお酒を飲んでみたよ。

ふんわりとろりとして美味しいんだなぁ。。これがv

「お稲荷さんやおにぎりの一個でも、お供えされると言うのは信仰の証し、keiさんには感謝しております。」

イワナの干物も美味しいよ。

骨がちょっと気になるけど、柔らかい骨なので食べちゃえ。

「しかしながら、わが主神様はずいぶんと以前に姿を御隠しなって、かわりに神使の私がこの地を見守っているしだいです。」

「だから、九尾の狐様とお知り合いだから、keiさんは狐の嫁入りを怖がらなかったんですね。」

あっそれ違う違う!

「あれっさめは守り狐のお話を知らなかったけ?」

「keiさんが持っている木彫りの狐ですか?」


そうそう、あれはお守りなんだけどね。

昔、裏岩橋には金山があったのね。

その金山がほしくて、伊達政宗が攻めてきたんだよ。

でも、でもきつね達に助けてもらったのです~o(^^o)

おしまい。

「えっ(さめ:いつもの通り、keiさんの話はぜんぜん解りません!)」

「なんか眠くなってきちゃったね。」

(さめ:いや重要なところなんで...)


「もうkeiさんはお疲れの様子ですね。それではkeiさんにかわって、私がお話ししましょう。」

金山めあてに伊達政宗が攻めてきたときのことです。

金山と国境を守っていた出城が、伊達政宗の家来の夜襲にあうのです。

城を守る時間もなく落城、武士たちは森の闇の中を逃げ惑いました。

「そうそう、逃げ惑うの~。きゅっびぃ~尻尾に挟まってイイ。」

「keiさん、オサキさんのお話の途中です、黙っていてください!」


すると森の中に一筋の光が見えたそうです。

藁をも掴む思いの武士たちはその光に引き寄せられます。

散り散りに逃げ惑っていた武士たちが集まりはじめ、その光についていったそうです。

光の筋は峠を越えて、ふもとの部落へ向かっている様子でした。

峠の難所も抜けて、民家の光が見えてきた頃です。

まっすぐに進んでいた光がバラバラになりはじめます。

そして、大きな声をあげて、峠の難所に向かって物凄い勢いで登っていきます。

このときに武士たちは、光が狐火であったこと知るのです。

大きな白いきつねを先頭に何十ぴきも狐が峠に向かって走っていきます。

なんと峠には、伊達の軍勢が追ってきていたのです。

難所に立ち往生していた伊達の軍勢は、大きな声ともに何十もの光が攻めてくるように見えたそうです。

まして峠の難所、罠にはまったと勘違いして逃げ帰ったそうです。

その後、小さな祠が建てられてキツネたちが祀られ、木彫りの狐のお守りができたそうです。

「keiさん、こんなお話でしたね?」

「スヤスヤ」

「keiさんは寝てしまわれたようだ。」

(さめ:keiさんはオサキさんのお腹にもたれ、尻尾に挟まって寝ています。なんか、ゆったりとした寝顔でぜんぜん緊張のカケラもありません。)

「ひょっとしたら、その白いきつねがオサキさんですか?」

「いやいや、きつねたちが武士を助けたのは本当の話です。しかし、伊達の軍勢を追い払ったのは武士たちです。」

「さめはオサキさんが祀られたのかと思いました。」

「私は神使です。祀られたりされる立場じゃありません。」

「さて、私たちも寝ましょう。」

(さめ:オサキさんは目を閉じると寝息をたてはじめました。オサキさんが息を吸い込みお腹が膨らむとkeiさんの体が浮き上がる。そしてまたお腹に沈んでいく。繰り返しています。うふふ)

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