第2話 猫魔王の民話

われわれは車のヒーターで暖を取り、エンゼルパイを摂取した。

ポットの冷めはじめたコーヒーも、心を落ち着かせるには十分な温もりをもっていた。

「さめぇ~カントリーマームもあるよ」

keiねっ、100均で買った非常持ち出し袋にスノボ小物を入れて携帯してるのね。

お菓子も入ってる~

袋の中から"さめ"にカントリーマームを探してあげました。

「keiさんっ太りますよ」

だいじょびったくさん動いたから~


あれから大変だったのね。

圧雪の上のパウダースノーなので、そこそこ雪に乗って滑れるんだけど、吹雪でなぁ~んにも見えない。

止まって位置を確認しようとして、転んで埋まってゴーグルも帽子も雪だらけっ!

吹雪の中にゆらゆら揺れるパトロールスノーモービルの赤色灯が見えたときは、ほっとして力が抜けたぁ。。

後部座席に乗せてもらったけれど、雪が舞い上がってすごいの~

疾走するスノーモービルのスピードもすごいっ!

雪が軽いので、積雪を吹き飛ばして走ってるって感じでしたよ。

やっとたどり着いたスキーセンターの中は、いつもどおりにあったかかったです。

でも、貸し出された毛布に包まって震えている人や、床に両手をついてうなだれている人。

缶コーヒーを飲みながら泣いている人もいました。

2階の猫猫食堂までは1階から長蛇の列が出来ていまったよ。


駐車場まで戻ってくると風はやわらいで、雪だけがいっぱい降ってます。

愛車イプサム君のバンパーが雪で埋まってる。

大きなホイールローダーがどんどん除雪していました。

「さめの推測によると、秘密の沼ロマンスリフト山頂と猫猫第一ロマンスリフト山頂に結界が張られ、なにやら負の力が集まっていると思うのです。」

もぐもぐっ

「keiさんっ聞いてるんですか!」

「聞いてるよっ、一番奥の猫猫第一ロマンスリフト山頂の猫魔岳に猫魔王がいるんでしょお」

もぐもぐっ

「さて行きますかぁ。。」

「keiさんっ行きましょう!」

"さめ"ってば、お目めがキラキラしています。

きっとまた泳いじゃったりするんだと思お~。

keiはスノボの後の温泉っ大好き!

猫猫スキー場のシーズンパスを持っていると、猫猫ホテルの温泉に600円で入れます。

雪に閉ざされた湖が一望できる露天お風呂は最高!


「keiさん!車のギアをドライブにいれて、どこに行くんですか?」

「猫猫温泉だよ。」

あれっ、"さめ"はどこにいくつもりだったんだろお!?

「keiさん、寒いですからいっぱい着てください。ホッカイロもしておいた方がいいですよ。」

なんだろお?

「非常持ち出し袋にお菓子とコーヒーポットを入れて持っていきましょう。」

もぐもぐっ?

「さあ、丸山から尾根伝いに調査に出掛けましょう!」

きゃ~~~~~っ


keiは猫魔王なんて、どおでもイイんだけどなぁ~?

猫魔王をご存じない方はいらっしゃいますか?

猫魔王と言うのはですねぇ。。

魔力を持った猫の王様です。

終わり...


瞳が温泉マークになっているkeiさんは、ぜんぜんやる気がないようです。

keiさんに代わって、"さめ"が猫魔王の伝説を説明します。


昔、とても腕のたつ賢明な猟師がいました。

ある時、狩りに出掛けていたときのことです。

急に胸騒ぎがしてきました。

家で留守番をしている奥さんの事が心配になり、帰ることにしました。

雪をかきわけ急いで家に戻り、奥さんを呼びます。

ところが返事がありません。

家の中は荒らされていて、奥さんの姿もありません。

猟師はすぐに猫魔王の仕業だと気がつきます。

猫魔王とは人を襲って食べてしまう恐ろしい猫の妖怪です。

猟師は急いで猫魔王のいる猫魔岳に向かいました。

そして猫魔王の住みかの門前で叫びます。

「猫魔王、いますぐに妻を返せ!返さぬのなら、この銃でお前を退治してやる!」

すると城門の中から恐ろしい猫魔王の声がしてきました。

「ならば、この中から本当のお前の妻を見つけてみろ!さすれば妻を返してやろう!」

猫魔王が姿を表すと、城門の前には何人もの奥さんが並んでいます。

猫魔王の言葉を信じるならば、一人がほんとうの奥さんで、後は猫魔王の手下の化け猫です。

ところが猟師はなにもまめらうことなく、すばやく銃で化け猫達を打ち倒したのでした。

そして奥さんを自分の身に取り戻すと猫魔王の頭を最後の銃弾で撃ち抜きました。


そうそう、なんで猟師にほんとうの奥さんが分かったのでしょう?

それは愛があるからです。

なんちゃって!

(失礼しました。BMG(B級魔法使いギャグ)を飛ばしてしまいました。)

賢明な猟師の夫婦は、よもやこんなこともあろうかと、二人だけの合図が作ってあったのです。

その合図がなんだったかは、もちろん二人にしかわかりません。

その後は猫魔王に怯えることのない平和な毎日が訪れたとさ。

おしまいo(^^o)


「猫魔王の伝説って、こんな感じでしたよね。」

スヤスヤっ

「夫婦の合図は秘密と言うことですよね?」

スヤスヤっ

「keiっもうたべれなぁい。」

keiさんは寝言を言っているようです。

耳元で叫んでみることにしました。

「keiさんっおしまい!おしまい!」

あっkeiさんの片目が開いてきました。

「もう終わったの~keiはあんこ玉ときなこ飴をくださいな。」

紙芝居じゃありません。

keiさんってば、ぜんぜん寝ぼけてます。


ツービーコンティニュ~なんでっす

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