第4話 見失われた道標

(場面:センター内・居住スペース)


エレン、食事を作っている。


エレン「………」


包丁で食材を切っているが、その手がガタガタと震えだす。

その手の震えを、横からおさえる手が突然のびてくる。


エレン「!」


ポールが横に立っている。   


ポール「こんな状況なんだ。恐怖に打ち勝つことは出来んさ」

   「恐怖を受け入れるしかない」

エレン「………」

ポール「あと、頼みがある」

エレン「?」

ポール「これはセクハラ行為にあたるかもしれんが、

    訴えるのは地球に帰ってからにして貰えんかね…?」


エレン、しばらくポールの顔を見つめているが、思わず吹き出してしまう。

ポールも微笑む。

ポール、その後少し離れた所にあるイスに腰掛ける。


ポール「(深いため息)ハァ…」

   「しかし、こうなってみると後悔ばかりだよ…」

エレン「後悔…?」

ポール「お恥ずかしながら、この惑星ホシに来たのは功名心なんだ」

   「エルザスで未知なる生物が発見された…」

   「その事実に学者としての探求心よりも、名をあげたいのが

    一番の理由で食らいついてしまった」

エレン「………」


ポール、険しい表情になり


ポール「でも一番の後悔は、自分の主張を引っ込めてしまったことだ」

   「掘り起こされた単体を研究していくうちに、大量生息している

    可能性が高いことにも気づいていたんだ!」

エレン「えっ?」

ポール「だからこの悲劇だって、もしかしたら…」

エレン「誰にも言わなかったの?」

ポール「進言したさッ!常駐軍の上層部にも話をした」

   「しかし、聞き入れては貰えなかった…」

エレン「………」


ポール、苦笑いを浮かべ


ポール「まぁ~簡単に言えば、学者は余計なことは考えず研究さえしていればいい、  

    ということなんだろうな」

   「だがどれだけ否定されても、声を大にして叫び続けていれば、

    もっと助かった命が…」


エレン、ポールを見つめ


エレン「で、でも…逃げなかった…」

ポール「えっ?」

エレン「こうして今もこの惑星ホシに残っているわけだし…」

   「危険を感じて、自分だけ逃げたりしなかった。

    それって、移住者達の身を案じたからなんじゃない?」

ポール「ふっ…そう言って貰えると、少し救われるよ」

   「ありがとう!」

エレン「そんな…」


ポールとエレン、見つめ合う。


ポール「本当は、君の話も聞かせて貰いたいところだが

    次の襲撃までもうそんなに時間が無い」

   「早く、みんなに食事を運ぼう!」

エレン「ええ」


(場面:管制室)


真剣に地形図を見つめるラルフのもとに、ヤンが歩み寄ってくる。


ヤン「僕も尋ねていいかな…?」

ラルフ「何だ?」

ヤン「さっき君が話しているのを聞いていたけど、次の部隊は僕達を救助する

   というよりは、GUYBACKの掃討を目的に来るんでしょ?」

ラルフ「ああ…」

ヤン「だとすると、ここの惨状は知っているわけだから、いきなり空爆するって

   いう攻撃もあるんじゃないの?」

ラルフ「………」

ヤン「空爆ならまだしも、大気圏外から核攻撃されたりしてね」

  「でもそれなら、僕等もGUYBACKあいつらも一瞬にして消滅だから、

   苦しみを味わない分、楽なのかも…」

ラルフ「それはない!」

ヤン「どうしてさ?」

ラルフ「エルザスの宇宙鉱石『デリアント』の安定供給が地球にとっては

    最重要課題だ」

   「もし、核爆発とデリアントの持つエネルギー性が予想外の化学反応を

    起こしてしまったら…」

   「惑星ホシそのものが無くなってしまうかもしれん。

    そんな危険なことはしない!」

ヤン「………」

ラルフ「それに惑星ホシが無事だったとしても、地表や大気が核汚染されて

    しまったら、ここでの採掘作業が出来なくなってしまう」

ヤン「だけど、部隊は僕達がセンターここにいることを知らないんでしょ?」   

  「大規模な縦断爆撃が行われる…」


ラルフ、ヤンの言葉をさえぎるように


ラルフ「空からの攻撃は上手くいかない!」

ヤン「?」

ラルフ「上手くいかないんだ…空からの攻撃は…」


ラルフ、険しい表情で一点を見据える。


(場面:エルザス/数日前)


第26コマンド部隊、あわただしく攻撃体制を整えている。


(場面:兵員輸送艇内)


ラルフ率いる第14分隊が待機している。


ラルフ「これから、空挺部隊の攻撃艇による空からの攻撃が開始される」

   「それでGUYBACKヤツラの多数を葬り去り、残党を俺達が

    殲滅する作戦だ」

   「勝負の時間は短いぞ…いつでも出撃できるように準備しておけ!」


兵士Cと兵士D


兵士C「攻撃艇?」

   「そんなの爆撃機で一斉に爆弾ばら撒きゃあ、いいんじゃねえの?」

兵士D「お前、アホか!」

兵士D「爆撃機じゃあ、速すぎるんだよ…」

兵士C「速すぎる?」

兵士D「動かない大きな施設なんかを攻撃するにはいいかもしれないが、

    動き回る小さな目標を攻撃するには、爆撃機の速度が速すぎて

    掃討作戦には向かないのさ…」


ラルフ、外の爆音を聞き


ラルフ「始まったようだな…」


(場面:エルザス)


GUYBACKの群れに対して、攻撃艇による空からの攻撃が開始される。


GUYBACK「ギャワーッ」「グオーーン」


叫び声を上げながら、逃げ惑うGUYBACK達。


(場面:兵員輸送艇内)


第14分隊が静かに待機している。

JJがハーモニカを吹いている。


兵士E「おいJJ、これから戦いに行くんだぞ」

   「どうせ吹くんだったら、そんなシミったれた曲じゃなくて、

    もっと勇ましいヤツにしろよッ!」


JJ、ハーモニカから口を離すと


JJ「別に、鎮魂歌レクイエムをひいているつもりはねえがな…」

兵士E「鎮魂歌レクイエム…?」

兵士E「馬鹿! 縁起でも無いこと言うなッ!!」


ラルフ、そのやり取りを遠目に見て、思わず苦笑い。

その時、無線連絡が入る。


ラルフ「なにィ!?」


                           <つづく>



【参考資料01】企画書・簡易版

https://drive.google.com/file/d/1FqEFjRaCUX7nAdkCCszB7fNvrilw2OVT/view?usp=sharing


【参考資料02】企画書・完全版

https://drive.google.com/file/d/1z8rwhQLt5_Sofmo3KMhOklpfB2YmOyDf/view?usp=sharing

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GUYBACK《ガイバック》 風海 徹也 @kazatetsu

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