第29話 マッサージタイム

 さて、マッサージタイムだ。

 トップバッターはベロニカか。

 お前、なんて恰好で来るんだ。

 バスタオル巻いただけじゃないか。

 下着は穿いているよね。


 えっ、ちょっと。

 嘘だろ。


 素数を数えるんだ。


「ベッドへうつ伏せに」


 当たり障りない、足裏からマッサージする。


「はうん、くぅん、あうん」


 色っぽい声を出しやがって。

 分かっているぞ。

 演技なんだろう。

 既成事実を作りたいのだろうが、そうはいくものか。


 地蔵の心。

 大地の様な慈悲で包み込むのだ。

 くっ、ふくらはぎに行くぞ。

 筋肉質だな。

 少し頭が冷えた。

 喘ぎ声は相変わらずだ。


 太腿に行くぞ。

 声のボルテージが上がる。

 お尻はパスとしてウエストの背中側。


 声が小さくなった。

 背中へと上がっていく。

 そして首筋にいって。

 肩を揉んで、頭をマッサージして、頭を軽く叩いて、終了。


 やり切ったぜ。

 くるりとベロニカが回転して、普通に寝た状態になる。


「表もやって」


 くそう、後ろ姿の数倍ムラムラとくる。

 棒で押すなら生々しい感触を味あわずに済むぜ。

 俺は棒でマッサージし始めた。


 太腿から始まって腹に。

 ぐぎゅるぐぎゅると腸が動く。

 塊があるぞ。

 便秘なのか。


 頭が冷えた。


「あん」


 棒が誤って。

 おっといけない、いけない。


「終わったぞ」

「ありがと」


 ベロニカが立つ時にはらりとバスタオルがほどけた。

 最後にきてこれか。

 狙ってたのか。

 覆面、後ろ被り。

 強奪のお供の覆面を持っていて良かったぜ。


 背中にベロニカが抱きついて生々しい感触を残して、部屋から出た音がした。


「ぷはぁ」


 俺は覆面をはぎ取った。

 ホラー映画ならここで最後のドッキリが。

 背後に視線を感じる。


「マッサージは終わったぞ」

「残念」


 ふう、最後まで気が抜けない。

 次はダリアか。


 ダリアは下着姿で現れた。

 それもピンクの際どい下着だ。

 これは水着。

 水着なんだ。

 下着と思うからエロいんだ。


「さあ、寝ろ」


 マッサージを始める。

 やっぱり喘ぎ声。


 それはもう経験した。

 もう、慣れたよ。


 だが、ダリアの体はマシュマロのようだ。

 もっと体を鍛えないと駄目だな。

 魔法に頼り過ぎだ。


 突然ダリアが足を開いた。

 むほっ、このアングルは不味い。

 足を強引に閉じる。

 足は方が手より力が強い。

 閉じられない。


「初級身体強化魔法」

「ずるいです」

「なに言ってるんだ。足を開く奴が悪い。行儀よくしろ」

「はーい」


 ふう、色々と仕掛けてくるな。

 マッサージは背中に移った。

 プチンと音がして下着が切れる。


 そんな気がしてたんだ。

 下着細工してたな。

 俺は慌てずにシーツを掛けて、シーツの上からマッサージを続行した。


 ふぅ、終わったぞ。


「いいか。痴女はエロくないんだ。見えそうで見えないのがエロい」

「そうですか」


 シーツをまとったダリアが端をチラチラまくって挑発してくる。

 くそう、要らない事を教えたか。


「初級闇魔法。もう見えないぞ。とっとと出てげ」

「お邪魔しました」


 さあ、アザミで最後だ。

 アザミは普段着で現れた。


 ベッドに寝かせ。

 まず服をチェックした。

 べつに変なところはないな。


 マッサージを始めた。

 喘ぎ声も立てない。

 少し痛いところで『くっ』と小さく言っただけだ。

 このまま終わるかと思ったら、どこからか水を出してきてびしょ濡れになった。

 服が透けてえらい事に。


 シーツを掛けると、シーツはアザミの影に吸い込まれた。

 やりおる。


「初級闇魔法。見えなくても手探りでマッサージは出来る」

「あっ、そこは」


 失礼、手が滑った。

 見えない方がかえってエロいような気がする。

 いかん、形を想像するのがいけないんだ。


 むにゅとした感触。

 見えない事を良い事に、背中をマッサージしてたはずが、バストに。


 アザミは強敵だ。

 こうなれば毒喰らわばよ。


 俺はアザミをくすぐり始めた。


「あひゃひゃひゃ、ちょ、息が」

「待たない」


 アザミが息絶え絶えになる。


「マッサージは終わりだ」

「背中、まだ」

「心のマッサージをしてやったんだ。笑って発散できたろう」

「不承不承」


 終わった。

 やり終えた。

 学校設立の為だとはいえ、今回は苦労したような気がする。

 事の大きさからすると、釣り合っているのかも知れない。

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