第20話 2階層

 今日から2階層だ。

 足を踏み入れて驚いた。

 見渡す限りの草原が広がっていたのだ。

 そう言えば小説でも、そういうのがあったな、

 小石を拾って上に投げる。

 こつんと音がして小石は落下した。

 天井があるようだ。

 空に見えるように偽装しているのか。

 地面も掘れば、すぐに石の床にあたるのだろうな。

 でも、灯りが要らないのはありがたい。


 おっとお客さんだ。

 大型犬ほどの白いウサギが飛び跳ねるように駆けてくる。


「気をつけて、首狩りウサギよ」

「首狩りとは、物騒だな」


 俺は草をいくつか結んだ。

 首狩りウサギはその結ばれた草に足を取られて転んだ。

 ベロニカが首に剣を刺し込む。


 ざまぁ、みさらせ。

 アザミが草のトラップに引っ掛かって転がる。


「すまん、今解除するから」


 俺は結ばれた草を剣で斬った。

 俺のスキルはいまひとつ使い勝手が悪いな。

 踏み台は仲間など作るなって事か。

 何か良い方法はないだろうか。

 草を団子にして痺れ薬をまぶす。

 なんとなく3人の誰かが、拾って食いそうな気がする。


 まさかな。

 やってみるか。


 首狩りウサギが走って来るので草団子を投げた。

 空中でキャッチしてもぐもぐ、痺れた。


 こりゃ楽でいいな。

 流石にモンスターに投げた餌を横取りして食う奴はいないだろう。


 何度か首狩りウサギを始末。

 そしてそれは起こった。

 草団子をベロニカがキャッチ。

 もぐもぐして、痺れた。

 しかし、フラフラになりながら根性で首狩りウサギを叩き切った。

 流石、主人公キャラ。

 痺れ薬くらっても動けるとは。


「ベロニカ、お前どれだけ食い意地が張っているんだよ」

「子供の頃に食べる物がなくて雑草を食べてたの。それを思い出したら、食べてみたくなって」


 すまん、生い立ちを考えなかった。

 結局、スキルは封印なのか。


 そういえば、ウサギって糞を食うんだよな。

 この3人も糞は流石に食わないだろう。

 俺は首狩りウサギの糞に痺れ薬をまぶした。

 それを投げる。


 くそっ、革袋の一つが糞専用になっちまった。

 投げ終わった後に手を洗うのがめんどくさい。

 どんな方法も一長一短あるものだ。


 流石に3人は糞は食わなかった。

 お菓子に見えたとか言って食ったらドン引きだがな。


 首狩りウサギの攻略法はなった。

 首狩りウサギとは別の色のモンスターが現れた。

 狼系のモンスターのようだ。


「草原狼よ、血の匂いに惹かれたのかも」


 このモンスターはどうしよう。

 生肉に痺れ薬だと誰か食いそうな気がする。

 めんどくさいから3人に任すか。


 とりあえず草原狼は、ダリアが拘束魔法で動きを止めて、ベロニカが止めを刺した。


「犬が食って死ぬけど、人間が食べて大丈夫な物ってあるか?」

「ある。キシリ草、ハーブの一種。だけど犬は食わない」

「おお、キシリ草なら持っている。調味料は一通り収納鞄に入れてある。身動きがとれない時に食料が無いと始まらないからな」


 パンに穴を開けてキシリ草を入れる。

 草原狼が来たのでそれを投げる。


 もぐもぐして、草原狼は痙攣して死んだ。

 効果は抜群だな。


「微妙な味」

「美味しくない」

「不思議な味」


 3人がもぐもぐしてる。

 拾うなよ。

 食うなよ。

 そう突っ込みを入れたいが、そういうスキルだから仕方ない。


 とりあえず、この階層はもう攻略したも当然らしい。

 それより気になったのはボス部屋が見えない事だ。

 こんなに見晴らしが良いのだから、遠くから扉が見えても良いだろうに。


 モンスターを倒しながら歩く事2時間。

 いきなり扉が現れた。

 幻影魔法が掛かっていたらしい。

 そんな事だと思ったよ。


「お腹一杯」

「少し腹ごなしをしないと」

「敏捷性低下」


 全く、沢山食いやがって。

 走らせるとモンスターにエンカウントしそうだから、反復横跳びをさせる事にした。


「よーい、どん」

「待ったあ。1位の商品は何?」

「そうですね。何かないと」

「勝利はキスに決まっている」


「燃えて来た」

「魔法使うのはありでしょ」

「負けない」


「おい勝手に決めるな」

「早く合図して」

「仕方ないな。よーい、どん」


 砂時計を設置して、反復横跳びが始まった。

 早いのはアザミ。

 続いてダリア。

 遅いのはベロニカ。


 アザミのスピードがどんどん落ちてくる。

 スタミナに難ありだな。


 ダリアの魔法が切れる。

 魔法を掛け直す間にベロニカが追い上げる。


 俺は砂時計が落ち切ったのを確認。


「終わり」

「はぁはぁ、213回」


 とベロニカ。


「220回です」


 とダリア。


「負けた。187回」


 がっくりうなだれるアザミ。


「やった、勝ちました。さあ勝利のキスを」

「目を瞑れ」

「はい」


 俺はダリアの唇に指を当てた。

 ベロニカとアザミはそれを見て何にも言わない。

 ニヤニヤ笑っている。


「目を開けて、いいぞ」

「やった、初キッスです。明日の朝は顔を洗いません」


「よし、準備運動も終わったから、ボスとやるぞ」

「はい」

「もう負ける気がしません」

「次は勝つ」


 俺はボス部屋の扉を開けた。

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