第17話 ダンジョン本格攻略

 ダンジョンの本格攻略が始まった。

 現場に行くと猟師小屋は壊され、屋根だけの建物になっている。

 ダンジョンの入口縦穴でなくて階段が設置されていた。


 入口にはギルドの職員が門番として立っている。

 入るのは自己責任だ。

 子供は流石に止めるが、15歳以上の成人なら止めないらしい。

 ベロニカに聞いた。


 ちなみにギルド職員は冒険者になれない。

 特例で依頼をこなす事は出来る。

 だが、依頼料は貰えない。

 倒したモンスターの素材とかは好きにできるのが救いだ。


 塩漬け依頼があるとギルド職員がやらされる。

 アザミの父親のテッセンの討伐とかはそういう感じだった。


「入ろう。初級照明魔法」


 魔法の灯りを出してダンジョンの中に入る。

 1階層は洞窟型だ。


「おっと、早速お客さんだ」

「任せて」


 ベロニカがゴブリンを一刀のもとに斬って捨てた。

 俺は魔石を抜いた。

 持っている紙に通路の情報を書き込む。

 俺はサポート要員だ。


「1階層は最短距離で行きましょう」

「そうね。弱い敵を倒しても実入りが少ないわ」

「賛成」

「そうだな。1階層ではろくな物はないだろう」


 攻略はサクサクと進んだ。

 弱いモンスターしか出て来ないからな。


 おやっ、通路に誰か倒れているぞ。

 少年と言っても良い、若い冒険者だった。

 俺はそいつを蹴飛ばした。


「ううっ」


 怪我人だったのか。

 1階層でやられるとは情けない。

 俺は懐を漁り、金を巻き上げた。


「初級回復魔法、釣りは出さないぜ」


 ベロニカが少年にポーションを飲ます。

 これじゃ赤字だ。


「ベロニカは優しいな」

「勇者だからよ。正直、この二つ名が重荷に感じる事もあるわ」

「それなら辞めたら良い」

「できればね。聖剣スキルが恨めしい」


「なかった方が良かったか」

「ううん、お父さんとの思い出だから。ただ別のスキルだったらと、考えてみただけ」


 スキルには人生が出る。

 ベロニカは正義を行ってきたのだろう。

 出会った頃に死にかけていたのは、食べ物を盗まなかったり、悪事を一切しなかったからと言っていた。


 少年の意識が戻ったようだ。


「ありがとうございます」

「別に礼は要らないさ。有り金もらったからな。だがポーションを使ったので赤字だ。悪く思うなよ」

「はい、感謝してます」


「気を付けて帰れよ」

「はい」


 少年が去って行く。


「送らなくていいの」

「彼死ぬと思う」

「絶体絶命」


 3人の視線が痛い。


「分かった分かった」


 俺の負けだ。

 主人公体質には敵わない。


 少年を追いかける。

 分かれ道だ。

 どっちに行った。


「二手に分かれよう」


 3人の視線が火花を散らしているように見えた。


「くじ引きだ」


 くじの結果、ベロニカと一緒になった。

 少年を追いかける。

 声が聞こえた。

 現場に行くと少年がスケルトンに錆びた剣で斬られていた。

 ベロニカがスケルトンを一撃で倒す。


「初級回復魔法」


 俺は少年に魔法を掛ける。

 くそっ、駄目だ。

 ポーションを傷口に掛けるが、血が止まらない。


「呪いに掛かったのね。手遅れだわ」


 ベロニカの冷めた言葉。

 アンデッドはこれがあるから厄介だ。

 ただ予防は簡単だ。

 レベルを上げればいい。


「初級解呪魔法。この馬鹿、生き返れ。この童貞野郎。包茎短小。おたんこなす。くそ。あほ。間抜け」

「無理よ」


 考えろ。

 呪いに卑劣な工作。

 どんな工作。

 そうだ。


「【たまにいい奴】。初級付与魔法。ベロニカ、聖属性を付与した。少年に触ってやれ」


 ベロニカが少年に触る。

 光が溢れて少年のほほに赤みが差す。

 傷もさっき掛けたポーションで治ったようだ。


 大赤字もいいところだ。

 少年を担いで、ダリアとアザミと合流。

 無事外へ連れ帰った


「ベロニカさん、僕と付き合って下さい。意識がなかった時にあなたの声が届きました。悪口でしたが、励ましてくれたんですよね」


 こいつ、俺の声とベロニカの声を混同しているな。

 死にかけていたから無理もない。

 ベロニカが笑っている。


「なぜ笑うんです?」

「あれは私じゃないわ。天使が囁いたのよ」


 どうやって決着をつけよう。


「おい、お前。ベロニカに粉を掛ける前に治療費を払え。金貨1枚だ」

「そんなの、払えません」

「じゃあ、いいバイトがある。駆け出しなんだろ」

「はい」

「他の駆け出しと仲良くなって弱みを探るんだ。俺に教えろ」

「出来ません」

「やるんだよ。それとも奴隷落ちしてみるか」


 少年は俺を睨んでる。

 俺は少年の肩を叩いた。


「分かりました」

「名前は?」

「カルセです」


 これで弱みを握って脅せば悪行ポイントも溜まるな。

 おっと今ので、悪行ポイントが1つ溜まったぜ。

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