第12話 ダンジョン
「今度こそ情報料を払ってもらいます」
駆け出しがそう言ってきた。
「無駄なあがきだと思うが言ってみろ」
「猟師小屋の床下から不気味な声が聞こえるんです。モンスターに違いありません」
「甘いな。どんなタイプのモンスターか調べずに情報を売ろうとはな」
「危機察知スキル持ちの駆け出しが、危険を察知したんです。最大級のね」
「素直にギルドに売れよ」
「こんな情報じゃ銀貨1枚が良いところです」
「違いないな。今日の俺は気分が良い。銀貨3枚で買ってやろう」
Sランクが3人もいればSランクモンスターでも何とかなるだろう。
俺は猟師小屋の位置を聞いた。
俺達4人は猟師小屋に着いた。
床板を叩いてみる。
別に普通の床だな。
俺はお香に火を点けた。
煙が一定の方向に流れる。
どうやら床下から風が吹きあがっているようだ。
俺はバールで床をこじ開けた。
ぽっかり開いている穴。
これを隠すために猟師小屋を作ったというわけじゃないよな。
土の感じから穴は最近出来たようだ。
モンスターの巣穴かな。
穴は人が3人並んでも入れる大きさがある。
入って見るべきだろうな。
「初級照明魔法。みんな、入るぞ」
穴は最初垂直だったが、3メートルほど下りると横穴になっていた。
向こうから何かが来る。
魔法の灯りに照らされたのはスケルトンだった。
俺はスケルトンの骨を砕いて魔石を採った。
「邪悪な魔法使いの棲み処かな」
魔法の光が現れて、その中からゴブリンが現れた。
「ここはダンジョンよ」
ベロニカがそう言った。
「ここがダンジョンか。初めてだから、分からなかった」
「これで大金持ちです」
「左団扇」
「権利は3人で分けろ。俺は要らん」
「何で?」
「小銭を漁っているのが俺には似合いさ。こんなのはトラブルの素だ。とにかくギルドに報告だ」
俺達はギルドに引き返した。
ギルドマスターの執務室のドアをノックする。
「入れ」
「邪魔するぜ」
俺はそう言いながら部屋に入った。
「今度は何だ? 厄介事か」
「半分当たりで、半分外れだ。ダンジョンを発見した」
「何っ! 本当か。これでこの街が何倍もの規模になるな。ただし制覇出来ればの話だが」
「確かにな」
ダンジョンは定期的にラスボスのダンジョンマスターを倒さないと、スタンピードを起こす。
それを抜きにすれば、魔石と高性能魔道具と高級ポーションの鉱山とも言える。
その価値は計り知れない。
「もちろん、お前達が制覇してくれるのだろうな」
「俺の柄じゃないが、仕方ない」
「こうしちゃおれん、領主様に面会せねば」
「じゃあな」
ギルドの酒場で大盤振る舞いだ。
全員に酒と料理を奢る。
もちろん3人のSランクがだ。
「ダンジョン制覇の仕事を請けてきた。抜けたかったら抜けて良いぞ」
「もちろんやるわ」
「私も参加します」
「参加了解」
「ねえねえ、パーティ名を決めましょうよ」
「そうね」
「いいね」
「勝手にしろ」
「ムスカリとハーレムが良いな」
「馬鹿、却下だ」
「勝手にしろって言ったじゃない」
「とにかく駄目だ」
「私はムスカリと妻達が良いと思います」
こいつら遊んでやがるな。
「変なのは駄目だ」
「ムスカリ親衛隊」
「ナイス、アザミ。良いわね。それにしましょう」
「そうね良いと思う」
それなら許容範囲だ。
守ってもらっている感が出てるしな。
「仕方ない。それで良い」
「後で親衛隊の規則を作らないと」
「そうね。揉めない為のルール作りは必要ね」
「親衛隊に入る試験が必要」
「ええ、厳しくしないと」
誰もそんなのに入らないだろう。
「酷いじゃないですか」
俺に情報を売った駆け出しが俺の所に文句を言いに来た。
「何が酷いって?」
「ダンジョンの利権は凄いですよね。おすそ分けが今夜一晩の飲み食いだけだなんて」
「いいか。もしお前が俺に情報を売らないで、ダンジョンを発見したとする。どうなると思う?」
「お
「違うな、物言わぬ死体になっている」
「えっ!」
「それぐらい利権というのは恐ろしいんだよ。分かったか?」
「強くないと駄目って事ですか」
「そうそう、俺にカツアゲされないようにするのも強くならないとな。ああいう事は頻繁に起きる」
「納得がいかない」
「諦めろ」
「騙されませんよ。正当化しているだけだ」
「じゃあ聞いてみるか。ベロニカ、依頼で大金が入った時に襲われた事があるか?」
「もちろんあるわよ。両手で足りないぐらい」
「くそう」
「そう言う事だ。俺って優しいだろ。カツアゲで分からせてあげてるんだ」
「くそうしか言えない」
まあ頑張れとしか言えないな。
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