第11話 魔族撃破

「臭い」


 現場の洞窟に到着したベロニカが鼻を摘まんで一言。

 くさにおいが充満している。


「中に入る必要はないさ。ほれっ」


 俺は幻覚剤を塗った果実を洞窟に放り込んだ。

 次々に洞窟から出てくるゴブリン。


 3人とストックがフラフラなゴブリンに止めを刺す。


「初級疲労回復魔法」


 ローズがストックの疲労を回復する。

 俺も真似してベロニカとアザミを回復してやった。


 そして、遂にゴブリンキングが姿を現した。


「上級身体強化魔法、【聖剣】」

「ストック、中級身体強化魔法」

「ローズ、ありがと。【炎剣】」


 そして攻撃が始まった。


「【斬撃】」

「【絶対貫通】」

「上級炎槍魔法」


 うん、俺の助けは必要ないようだ。

 ゴブリンキングは切り刻まれて討伐は終わった。


 むっ、誰か出てくる。


「良くもやってくれましたね」


 青い肌に頭の両脇に角。


「みんな魔族よ。気を引き締めて」

「ええ」

「了解」

「おう」


 ストックが突撃。

 燃え盛る剣は氷の剣で跳ね除けられた。

 そして蹴り飛ばされ吹っ飛ぶ。


 ベロニカの白いオーラの剣は、黒いオーラの剣で受け止められた。

 そして蹴り飛ばされる。


「【絶対貫通】」


 アザミの投げナイフは空中で掴まれた。


「上級拘束魔法」


 拘束魔法はすぐに砕かれた。


「まだまだぁ、ローズあれをやるぞ」

「はい。中級炎付与魔法」


 ストックの剣が一層激しく燃え上がる。


「最上級氷結魔法」


 魔族が魔法を唱えストックの剣は凍り付き砕け散った。

 ストックが魔族の剣で斬られる。

 ストックの鎧が裂け血が噴き出した。


「ストック! 中級回復魔法」


 ローズが回復魔法を掛けて、ストックはポーションを飲んだ。

 死んではいないが戦力ダウンだな。


「【斬撃】【斬撃】【斬撃】」


 ベロニカが三連撃を放つ。

 キンキンキンと甲高い音がした。

 全て防がれたようだ。


「【影潜】」


 ベロニカが相手をしている隙にアザミが魔族の影に潜り込む。


「【絶対貫通】」


 三連撃が終わった瞬間にアザミが死角から突きを放つ。

 後ろ回し蹴りを食らってアザミが吹っ飛んだ。


 ぜんぜん歯が立たないな。

 切り札を切るしかないようだ。


「【たまにいい奴】。初級風魔法」


 俺は目が痛くなる粉を魔法で飛ばした。


「私とした事が」


 魔族は目から涙を流した。


「上級拘束魔法」


 ダリアの拘束魔法で魔族の動きが一瞬止まる。


「今だ」

「【斬撃】」


 ベロニカが止めの一撃を放つ。

 剣は首を深く切り裂いた。


「かひゅう」


 首から青い血が噴き出して、魔族は死んだ。


「ステータス」


――――――――――――――

名前:ムスカリ LV20


魔力:257/943


スキル:

 踏み台

 たまにいい奴

 卑劣な工作


悪行:0ポイント

――――――――――――――


 レベルが一つ上がったな。

 俺もこれで一流の仲間入りだ。


「ダリア、まだ魔力に余裕があるか?」

「ええ」

「じゃ洞窟を崩してくれ」

「【上級地震魔法】」


 地面が揺れた。


「最後は任せろ。初級弱点看破魔法」


 俺は赤い点に剣を突き刺した。

 洞窟が崩れ始め、土ぼこりが出口から出て来た。


 終わったな。


「ムスカリ、お前そこそこやるんだな」


 ストックが感心したように言った。


「まあな、これでもギルドの教官だ」

「私達の師匠ですから」

「そうね」

「やるなんてもんじゃない」


「3人が何でムスカリとつるんでるか分からなかったが、今日分かった気がする。グランドマスターにこの事を伝えておこう」


 やめてくれ。

 俺は平穏な生活が欲しいんだ。

 注目されたらそれがなくなるじゃないか。


「俺の評判も忘れずにな」

「ああ、伝えておこう」


 悪評が伝われば、重要なポストにはけないだろう。


「魔族討伐を祝って乾杯!」


 ギルドの酒場でベロニカが音頭をとる。


「乾杯」

「乾杯」


 俺は無言で杯を挙げた。


「お父さんどうしたの」

「昔を思い出してた。馬鹿ばっかりやってたなと」


 前世の記憶が戻る前だけどな。

 ローズの傍らにいるストックが妬ましくて、ストックに突っかかっていったな。

 貴族である事で脅して、嫌がらせを散々してたっけ。

 あれから10年か。

 思えば色々とあったな。

 今日の酒は湿っぽくなりそうだ。

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