第6話 新たなスキル

 昼間、ギルドの酒場でジュースをちびりちびりやっていると、影が差した。

 見上げると赤毛の女性が立っていた。


「師匠、お久しぶりです」

「もしかしてダリアか。何歳になった?」

「女性に歳を聞いてはいけませんよ」


 ええと20歳ぐらいに見える。


「あっ、放火魔がいる」


 ベロニカがやってきた。


「ふん、斬り裂き魔が何を言う」

「二人とも知り合いみたいだな。ダリアは俺の最初の生徒なんだ」

「そう私は初めての女」

「それなら私は初めての家族よ」


「言い合いなら別の場所でやるんだな。何か用か?」

「騎士団の武術指導顧問にならない」

「宮廷魔法使いの指南役にどうですか」


「くっ、目的は同じか」

「ええ、そのようね」

「どっちもパスだ」


「断るなら王都に一緒に行って」

「そうですね私の方も来て頂かないと」


 めんどくさいな。


「とにかく断る。お前達が勝手に話を進めたんだ。俺は知らん」


 二人とも諦めないだろうな。

 ここは悪人という事を印象付けて諦めてもらうか。

 ええと何をするかな。


「二人とも暇なら依頼につき合え」

「もちろん行くわ」

「ええ私も」


 俺は盗賊退治の依頼をがした。

 偽装の馬車で街道を行く。

 俺は御者台に、ベロニカとダリアは荷台に隠れた。

 馬車は進み、両側が深い森の場所で俺達は盗賊に囲まれた。


「殺すなよ。賞金首は生きてた方が高い」

「ええ」

「了解です」


 俺達が馬車から降りると盗賊は口笛を鳴らした。


「美女が二人とはついてますね」

「野郎ども。男は殺して、女は生け捕りだ」


 ベロニカは鞘ごとベルトから剣を抜くと、盗賊達に襲い掛かった。


「上級睡眠魔法」


 ダリアの魔法で盗賊がばたばたと倒れる。


「おい、俺を雇わないか。金貨10枚でどうだ」


 俺は頭目に話し掛けた。


「おう、頼む。あいつらの仲間だったって事は凄腕なんだろう」

「そうだな」


 俺は頭目に近寄るといきなり殴った。


「こいつ、裏切りの裏切りをしやがった」


 そばにいた盗賊が呆れる。


「説明が下手くそな奴だ」


 俺はそいつも殴ってやった。

 ピコンとメッセージが。


 『卑劣な工作スキルを獲得しました』とある。


「ステータス」


――――――――――――――

名前:ムスカリ LV19


魔力:815/836


スキル:

 踏み台

 たまにいい奴

 卑劣な工作


悪行:247ポイント

――――――――――――――


 ええと詳細は。


――――――――――――――

卑劣な工作:

 卑劣な工作は全て成功。

 だが、英雄またはその素質を持った者には勝てない

 パッシブスキル。

――――――――――――――


 おお、踏み台らしいスキルだ。

 そうなんだよな。

 踏み台が卑劣な工作すると100%成功しちまうんだよ。

 そんなの気づけよという工作に主人公が気付かない。


 スキル獲得はその人の人生が色濃く反映されるらしい。

 まあ、なんだ。

 そういう人生を送ってきているしな。


 でも良い物を貰った。


「あっ!」


 俺は明後日の方向を指差した。

 盗賊達が一斉にそちらを向く。


 ベロニカとダリアもつられた。


 全く凄いスキルだ。

 俺は盗賊のポーションに痺れ薬を入れて回った。

 硬直が長いな。


 盗賊とベロニカとダリアが復帰した。


「くそっ、何にも無いじゃないか。騙されちまった。眠っている奴に気付け薬を飲ませろ」

「へい」


 気付けのポーションを盗賊達は使った。

 怪我をしている奴は回復のポーションだ。

 そしてもれなく痺れた。

 一人目で気づけよ。

 まあ、そういうスキルなんだけどな。


 盗賊の全員が痺れて、盗賊討伐は終わった。


「流石、師匠です」

「当たり前よ。お父さんは凄いんだから。そんでもって私の師匠なんだから」


 なぜか株が上がった。

 俺は盗賊の懐を探って金品を巻き上げた。

 臭い服も剥がして、全裸にして輸送する事に。

 ベロニカとダリアは目をそらして仲良く御者台に座り、俺は盗賊達と荷台に座った。


 服はもちろん古着屋に売る。

 盗賊討伐は美味しいな。

 とくに『卑劣な工作』スキルを得た今となっては、楽勝と言うしかない。


 『卑劣な工作』はモンスターとかにも使えそうだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る