第4話 ゴブリンキング

 今回のゴブリンの巣は平地。

 かやで家が作られている。


「ひゃっはー、初級火球魔法。おら、燃えろ、燃えろ」


 俺は魔法でゴブリンの家に火を点けた。

 火は瞬く間に燃え広がった。


「悪徳教官、容赦がないな」

「ああ、嬉々としてゴブリンを狩ってやがる」


 そんな声が聞こえて来たが知るものか。

 それから俺は無双した。

 レベル17を超えるゴブリンなどいない。


 そう思っていたら、俺の剣を錆びた剣で、受け止めたゴブリンがいた。


「初級魔物鑑定魔法」


――――――――――――――

種族:ゴブリンリーダー LV20


魔力:454/471


スキル:

 斬撃

 雄叫び

――――――――――――――


「グギャー!!」


 くそう、体が硬直した。


「初級状態異常回復魔法。お返しだ。初級石弾魔法」


 ゴブリンの顔面に石弾を叩きつけてやった。

 チャンス。

 ゴブリンは目をかきむしっている。

 俺はしゃがむと剣をゴブリンの股間に刺し込んだ。


「ギャー!!」


 今度は雄叫びでなく、悲鳴だ。

 俺は念のためゴブリンの足を踏んづけて、あごに下から突き上げるように剣を刺し込んだ。

 そして短剣で喉をかき切る。


 油断しているとろくな事がないな。


「ステータス」


――――――――――――――

名前:ムスカリ LV17


魔力:316/645


スキル:

 踏み台

 たまにいい奴


悪行:281ポイント

――――――――――――――


 ここに来るまで、だいぶ魔力を使ったな。

 ベロニカは危なげなく戦っている。


 ベロニカの前方に髑髏のついた杖を持っているゴブリンがいる。

 ゴブリンマジシャンだろう。

 俺はこそっとゴブリンマジシャンの後ろに回り込み、尻の穴に剣を突き立てた。


 ゴブリンマジシャンがのたうち回る。

 俺はゴブリンマジシャンに止めを刺すと、近くにいたゴブリンの鼻先に剣を突き出した。


 顔を歪ませるゴブリン。

 俺はゴブリンの胴体を深々と突き刺した。

 ゴブリンの腰布で剣を拭って次の獲物を探す。


 ゴブリンの5匹集団に出くわした。

 俺は目に入れると痛くなる香辛料を投げつけた。

 目をかきむしるゴブリン。

 止めを刺すと、野太い吠え声が聞こえて来た。

 その方向に目をやると、ベロニカがゴブリンキングと戦っている。

 まだスキルを使うには早い。


 戦いを見守る。

 戦いは一進一退だ。

 鍔迫り合いになった時にゴブリンキングはベロニカの鎧と上着をはぎ取った。

 露わになる胸。

 ベロニカは手で胸を隠した。


 ピンチだな。

 俺の出番だ。


「【たまにいい奴】。初級風刃魔法」


 ゴブリンの顔面に風の刃が激突した。

 ゴブリンキングの目が見えなくなる。


「上級身体強化魔法【聖剣】【斬撃】」


 ベロニカが一撃でゴブリンキングのこん棒ごと真っ二つにした。


「油断したな。形の良い胸が見られて眼福だったけどな」

「お父さんさえよければ何時でも見せるのに」

「もう少し育ってからな。お子様体型じゃ、立つもんも立たない」


「ゴブリンキング討ち取ったり!」


 ベロニカが勝ちどきを上げる。

 その時、ゴブリンキングと同じぐらいの大きさのゴブリンが家から出て来た。

 体型をみるに雌だな。

 ゴブリンの雌とは珍しい。

 ゴブリンクイーンだろう。


「ステータス」


――――――――――――――

名前:ムスカリ LV18


魔力:308/736


スキル:

 踏み台

 たまにいい奴


悪行:0ポイント

――――――――――――――


 さっきので、悪行ポイントはゼロだ。

 その代わりにレベルが1つ上がった。

 俺はゴブリンクイーンの登場で呆けている味方をビンタした。


「何しやがる」


 次々にビンタ。

 呆けてない奴もビンタ。


「ステータス」


――――――――――――――

名前:ムスカリ LV18


魔力:308/736


スキル:

 踏み台

 たまにいい奴


悪行:15ポイント

――――――――――――――


 くそう溜まりが悪い。

 これで勝負するしかないか。


 ゴブリンクイーンは素手だ。

 ベロニカの攻撃を素手でパリィしている。


 ベロニカがその大きな手に捕まった。


「【たまにいい奴】。初級身体強化魔法」


 ベロニカに身体強化魔法を掛ける。

 中級ぐらいの効果はあるはずだ。


「【聖剣】」


 ベロニカがゴブリンクイーンの腕を切り落とし、返す刀で首を斬り裂いた。

 ふぅ、何とかなって良かったよ。


「おら、金出せ。ベロニカの胸を見た罰だ」

「横暴だ」

「知るか。殴られたいか」


 帰り道に何かあると困るからな。

 悪行ポイントを溜めておくに限る。


 その様子をベロニカが苦笑いして見ていたので、俺は片手を挙げて応えてやった。

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