13 三人お揃い
ニール公爵が夜会を開いてくれると言い出した。
マチルダとジョシーとわたしがお揃いのドレスを着るところを見たいのだそうだ。
びっくりしてすぐマチルダに連絡をした。あの夜会で友達になったわたしたちは、互の家を訪問したりとても親しくしている。
今、わたしはキャロルにも来てもらって公爵邸で会議をしている。
ちなみにキャロルのことをキャラウェイ夫人に相談したら、かなりの待遇でやとってもらえた。
従業員だけど、半分後継者扱いみたいだ。それほどキャロルの才能はすごいようだ。
キャロルはわたしの話を聞いて絶句したが、すぐに引き受けた。
「三人のお揃いってむずかしくない?」
「そうですね、皆様タイプが違いますし・・・・」
そういいながらも、手はどんどんドレスを描いて行く。
わたしたちはお茶を飲み、お菓子を食べて出来上がるのを待った。
「どうでしょうか?」とキャロルは二枚の絵を差し出した。
「「「どっちも素敵、どうしてこんなのを思いつくの?」」」
「「「決められないよーー」」」と騒いでいたら、公爵がやって来て
「なにを決めるのか?高い方にすればいい」とかわかんないことを言い出したので
説明した。説明しながら不吉な予感が・・・・・
「どちらも作りなさい」当たった。
そういうことで両方作ることになった。
婚約の祝いの夜会の時は服地などの調達に苦労したようだが、今回はキャラウェイ夫人がついているので、いい物を選べる。人手も充分だ。
それでわたしたちはそれぞれ母親だの侍女だの乳母だのを連れて、服地を選びに行った。
キャロルの助言も入れて全部が決まったのはお昼も過ぎたお茶の時間だった。
そしたら、公爵がカフェに予約を入れてくれていた。
まえに二人で行ったカフェだ。予約と言っても大所帯だ。貸切だった。
楽しいことをやって疲れたあとのお菓子はおいしかった。
その後、仮縫いでキャラウェイ夫人の店に何度かお邪魔した。屋敷に来てもらうのもいいけどお店にお邪魔するのも楽しいものだとわかった。
そうやって過ごしているうちにドレスができあがった。どちらを先に着るかが問題だけどこれは三人でこっそりと決めた。
迷うと騒動になるとわたしたちは勉強したのだ。
「四人」どちらを先に着るか決まった。
今、わたしたちは小物屋さんに来ていて、こんど入って来た客が偶数か奇数かで順番を決めることにしていたのだ。四人、偶数だね。
◇◇◇
ニール公爵の夜会は今日だ。しっかりと準備した。ドレスは三人色違いだが、パステルカラーで装身具はそれぞれが好きなものを付けることにした。
わたしのエスコートはバージルだ。
わたしたち、三人は約束通り同じ時間に到着して、揃って会場にはいった。そして急に招待されたキャロルがわたしを一緒に馬車から降りた。
キャロルはキャラウェイ夫人の作品のドレスを着ている。よく似合ってる。
「お嬢さんがた、よく来た。そろって美しい」とニール公爵が出迎えてくれた。
先ずダンスだよなとそれぞれフロアに向かう。キャロルはニール公爵が満面の笑みで真ん中に連れ出していた。
ちょっと緊張したけどバージルの笑顔をみるとほっとしてリラックスできた。マチルダもジョシーも楽しそうに踊っている。翻るドレスが美しい・・・・
次の曲はバージルがキャロルを助けに行ってわたしがニール公爵と踊った。
少し張り切ってステップと複雑にしたけど、けろっとしている。くやしいけど見直した。ニール公爵はダンスがうまい。
踊り疲れたわたしたちは・・・・だって公爵みんなと踊ったのよ・・・疲れたわ。
いつものように座って公爵たちの
「そうなのか?バロスにいたのか。デザインを描いたスケッチブックを・・・」
「焼却炉で・・・・そりゃ、辛かったでしょう」
「こちらのお二人が・・・あの婚約の時のドレスは良かったなぁ」
「それって大きな声で言えないが・・・デザインを・・・盗まれたってことか?」
「盗まれたなんて大きな声で、盗まれたって言い方はよくないでしょ。参考にしたとか、丸写ししたとか」
「そうか盗むなんて人聞きの悪い言い方だった。丸写しだ」
「バロスでデザインを丸写しか」
もうやめてあげて・・・いやもっと言ってやれ・・・聞きながら複雑だった。
だって、侯爵家にいたころのドレスには恨みがあるから・・・・
キャロルは公爵にかこまれておどおどしていたけど、
お昼を食べる時間もなかったとか、休みがなかったとか、しまいには給料もなんとかかんとかうやむやにされて払ってもらえなかったとか、上手に喋らされていた。
これで明日にはデザイン泥棒とか従業員は性格が悪いとか、悪い評判が広まるだろう。
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