14 カーライル公爵家の園遊会

カーライル公爵家が園遊会を開くことになった。



招待状はわたし個人に送られてきた。リンバロスト子爵として出席することになる。公爵にも送られてきていた。


ただひとつドレスコードと言うのが指定されており緑の物を身につけて欲しいということだ。


今回のドレスはわたしが好きに注文することになった。といってもよくわからないので侍女長と相談して注文した。




髪飾りはリボンではなく温室で栽培に成功した翠蘭を使うことになった。これは緑の蘭なのでドレスコードバッチリです。


ちなみにエスコートは公爵がしてくれるらしい。ってことはアンドリューはジェラルドをエスコートってことかな?

既成事実を積み上げてますね。



さて、当日は薄曇りでいい風が吹くピクニック日和で馬車から降りたらお肉が焼けるいい匂いがしていた。


さきに来ていたアンドリューとジェラルドと合流して公爵をテントに送っていくとお料理のテーブルを回った。




「その髪飾りいいね」


「うん、公爵様のアイデアなの」


「そろそろ公爵様をやめてお祖父様って呼べよ」


「えーー?嫌がらないかしら」


「そんなことないさ・・・・ほんとのことだろ」


「そうだけど・・・・」


「呼んでやれ・・・呼んでやって欲しい。多分救われる・・・」


「そうだね、良くしてもらっていると思うから・・・それくらいは・・・でも迷惑じゃないよね」


「妊娠中のキャサリンを引き取りたいと思っていたくらいだ。呼んでやれ」


「・・・・はい」


そうやって話している時にバージルがやって来た。


「その髪飾り・・・・似合ってる」


「うん、庭の温室にあったのを使えって言われて」


「うーーんそれね、そんじょそこらの宝石より高価だよ。それを使い捨てとは公爵家って」


ジェラルドはそう言い終わると


「アンドリュー、公爵家を乗っ取れ。バージル手伝え」と言って皆で笑った。



そこで給仕の動きが活発になったなと思っていたら王太子が到着したらしい。


知らせが行ったのかカーライル公爵もテントからでて来た。少し離れて三公爵が歩いて来た。今日も四人が揃っている。


公爵が四人、足を止めて待っている所に王太子が歩み寄った。寛大に公爵一行が挨拶を受けた。

実力的に公爵のほうが王太子より上ってことをしっかり示しているのね。っていうかこの前の夜会の時といい今といい王太子にあたりが強いよね。


そこにシャーロットが侯爵夫妻に付き添われて登場した。侯爵一家も四人に挨拶をしている。


侯爵夫人がやっとこさ礼をとってやっこらさと頭をあげた時、お祖父様が走り寄った。


「なぜお前がそれを持っている。それはキャサリンに持たせた者だ。おまえは泥棒か?


「リオネル落ち着け」とカーライル公爵とブルークリフ公爵両側から、肩を抱いてお祖父様の背を撫でている。


わたしたち四人もお祖父様の元に急いだ。


「あぁエリザベート」とカーライル公爵はわたしに気づくと場所を譲ってくれたのでお祖父様の腕に腕をからめた。


「お祖父様・・・・」と声を掛けると


「エリザベート見ろ。あれを。あれはキャサリンの・・・・お前の母親の・・・・」


そう言われて侯爵夫人のネックレスを見ました。・・・・思い出しました・・・・お母様・・・・バージル・・


「あれはお母様の目の色・・・」とわたしが言うと


「そうだ、キャサリンの目の色だ。あれだけだ。わたしの目の色を受け継いだ子は・・・・それをなぜその女が・・・・」


「うそですわ・・・・緑の宝石なんて・・・どこにもありますわ」とシャーロットが大声で反論したので、その態度に対して避難の言葉がさーーと広まった。


「うそではない」とブルークリフ公爵が静かに言った。


「そうだ、わたしらは皆覚えている。こいつがそれを買ったと自慢した日を」


「マギー、素朴でやさしい日だまりのような娘じゃった」


「こいつが一目惚れしてすぐに家に連れていってしまったがな」


「自分の目の色の宝石を持たせると長い時間をかけて探させたのじゃ」


「そしてマギーに贈ったが、マギーは死んでしまった」


「そしてそれはキャサリン・・・・そこのエリザベートの母親、前侯爵夫人のものになった。偶然おなじ目の色だと、悲しそうに、ちょっと自慢げに報告したのをよく覚えてる」

「そうだ。おまえがエリザベートから取り上げたんだ」とお祖父様が侯爵夫人に言った。


「もしかしてエリザベートあの日はあの宝石のことで泣いていたのか?」とバージルがそっと聞いてきた。わたしは黙ってうなづいた。


「そっか取り上げられてぶたれたんだよな」


うなづいたわたしを見てバージルがそっとハンカチを渡してくれた。


『ハンカチ?』その時わたしは涙があふれているのに気付いた。


カーライル公爵が


「侯爵夫人、テントへ」と言うと先に立って歩いて行った。


カーライル家の執事が


「皆さん、もうすぐお肉が焼きあがります。ぜひ召し上がって下さい。お酒の追加も必要そうですね。悪いものを吹き飛ばしましょう」と大声で案内するとお肉を乗せた皿を給仕がどんどんテーブルに乗せて、

「どうぞ、熱いうちに」と声をかけた。


客は好奇心ではち切れんばかりになりながらも、礼儀正しくその話題をさけてお肉がおいしいとか、今日はピクニック日和だとか会話をはずませていたが、目線はテントから離れなかった。


わたしはお祖父様が心配でテントについて行きたかったがアンドリューに止められテーブルに座った。

ジェラルドがお肉と飲み物を持ってきてくれ、ついでにまわりのテーブルのご婦人たちにもさりげなく皿を配った。


バージルが

「エリザベート、僕のこと思い出してくれたよね。初めてあった日。ほらお城の女神像のところで、君が泣いていて」わたしは黙ってうなづいた。

「よかった思い出してもらって・・・あぁそれどころじゃないね。あの日君はお母様の物を妹が盗って返してって言ったのに返してもらえなくてぶたれたって言ったよね」わたしはうなづいた。

「そして僕は君にたいしてすごくばかなことを言って・・・・後で馬鹿者って父にも兄にも怒られたよ」わたしはあの時の会話とそれが慰めになったことを思い出して笑った。

「あのとき家においでって言っただろ、今でもそう思っているから」


まわりのご婦人は黙って耳をかたむけているようです。明日の話題は王太子妃候補の実家のスキャンダルですね。



こんな形で暴露されるなんて・・・・


さりげなくテントに出入りしていたアンドリューが声を潜めて状況を教えてくれるが、微妙に声が大きいので近くのテーブルに聞こえるみたい。


曰く、侯爵夫人が泣いていた。とったのはシャーロットで侯爵夫人はそれを保管しただけ。シャーロットはおもちゃと思ったと言ったとか。

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