16 なんだかいろいろ
侯爵家からわたしに連絡がきた。
リンバロスト子爵への連絡なので、握りつぶすわけにもいかずわたしに手渡された。
なにせ送り主は国王で、侯爵に会ってやって欲しいというものだった。
ただ、身内で保護者と言うことでお祖父様が先に書簡を読んだ。そしてわたしに内容を教えてくれた。
侯爵家の執事のチートンが大金を持って逃げたらしい。だからなに?と思ったが、好奇心に負けて王宮で侯爵と会うことにした。
つきそいはバージルとお祖父様。
二人には今回の経緯をきちんと話して執事の件で王太子がわたしを非難したことを、公の場で避難して目撃者がたくさんいることも話している。
そして自分で対処すると念を押している。あの王太子のこと、わたし恨んでいるのよね。すごく・・・ほえづら書きやがれ!!ってんだ。
そんなわけでわたしは威勢良く馬車から降りたつもりで、バージルに手をかしてもらって優雅に降りた。
宰相を始めたとした王宮の文官さんを交えた侍従の皆さんがずらっと並んで出迎える中、侯爵が待っている部屋に向かった。
部屋には王太子とシャーロットが待っていた。
「おや、この部屋でいいの?」と案内の侍従に独り言のように問いかけると
「王太子殿下、シャーロット様お邪魔してしまい申し訳ございません。すぐにお暇します」とカテシーをした。
バージルは無言で頭を下げた。お祖父様はふたりを無視していた。
「いや、エリザベート、ここでいい」と王太子が答えると
「エリザベートを名前で呼ぶのは礼を逸しておりますよ、王太子殿下」とバージルが言い
「小倅はほんとに礼儀を欠いておるな」とお祖父様が呟く、絶妙に相手に聞こえる音量で悪気なくびっくりしたって感じが無邪気な感じだ。お祖父様の演技力に乾杯だね。
「失礼した、リンバロスト子爵」
「お姉さま、わかってらしたんでしょ」
「シャーロット様、前にも申し上げましたががわたしは姉ではありません」
「シャーロット、リンバロスト子爵にお詫びと挨拶を」
と王太子が言うとシャーロットはショックを受けて無言になった。
この二人、打ち合わせをしていないのでしょうか?
「挨拶など不要です。侯爵に会いにきたのですが、いらっしゃらないようですので失礼します」というとバージルもお祖父様もうなづいた。
「待ってくれ、侯爵ではなく、わたしとシャーロットと話をして欲しい」
「話とはなんの話しですか?」
「執事の件だ」
「執事とは?」
「侯爵家の執事だ」
「王太子殿下が太鼓判を押した執事のことですか?」
「そうだ、もったいぶらずに話をしたい、その執事が大金を持って姿を消した」
「消したのなら探せばいいのでは?」
「探している・・・・見つからない」
「そうですか」
「どうしてあいつが怪しいとわかった?」
「なんとなく」
「なんとなくか・・・まぁどうでもいい、早い話があの執事が金を持ち逃げして侯爵家は困ったことになった。そこで最初の妻の娘のおまえが金の面倒を見てやって欲しい。シャーロットはおまえの妹ではないか?おまえも俺を妹に取られてくやしいだろうが、そこは・・・・家族の・・・・」
「王太子様は婚約者の情がありますか?」
「もちろん、ある」
「では婚約者の情でお金の面倒を見ればよいのでは?あの執事は王太子殿下が保証した執事ですし・・・・」
「そう、簡単なことでないのだ」
「お金の問題ですよ。簡単だと思いますが。」
「執事に関しては王太子殿下が保証した方です」
「お金は王太子殿下が補えばいいのでは?」
「王太子、王家はどうも教育を間違ったようだな。好きにやらせ過ぎたようだ」とお祖父様が王太子に言った。
「なに?その態度は」と王太子が大声を上げたが、お祖父様は涼しい顔をしていた。
とドアが開けられ、国王夫妻が入って来た。
「マクバーディ公爵閣下、息子が無礼を」と国王が頭を下げた。隣で王妃も頭を下げている。
「父上、どうして公爵に頭を・・・・王命で侯爵家を助けるよう言って下さい」
「助けてやりたい・・・・お金はなんとかなるが・・・・おまえは国王になれない」
「なぜですか?」
「おまえもわたしたちも気付かなかった。愚かだった。いや、最初から・・・・」
「公爵閣下、わたしから若い者に説明していいか?」
「どうぞ、年寄りには荷が重い」とお祖父様が国王に答えた。
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