17 この国の真実

「この国がどうやってなりたっているかシャーロットは知っているな」


「もちろんです。王家を中心に、王家を盛り立てるように貴族が動いています」


「そうです、だからエリザ・・・いやリンバロスト子爵はシャーロットの実家の侯爵家の危機を喜んで救わねばならないのです。それを・・・こいつは・・・」


王太子殿下の言葉の最後の部分を聞いて国王陛下は頭をかかえた。


「いや、いい。続けよう」


「そうだな、他国からはこう言われているな。忠実な四公爵家が英明な王室を支えていると」

「そうです」と王太子がわたしを見た。


「英明な王室・・・・・」と国王は呟くとうなだれた。


「立国以来、王室は途切れることなく続いている。我ら王室の先祖が立国の英雄、ギルベルド・ワイストーヌで連綿と血を受け継いでいる。そう思われているが違うんだ。わたしの祖父は四公爵家のどこかから、王家に養子に入っている。そして王太子になり、父が生まれた。同じようなことが何度かこの王室に起こっている。

養子の件は秘密でもなんでもないぞ。公式に発表されたし記録も残っている。

おまえは廃嫡され、四公爵のどこかから養子をとりそれが王家を継ぐ」


「なぜですか?わたしがなぜ廃嫡?」


「シャーロットは王太子妃としてふさわしいか?実家は?それに夫人の連れ子だ。血は引いているかも知れない、だが生まれたとき夫人は結婚していない」


「それは・・・・努力で・・・・」


「おまえは愚かだった。そちらのリンバロスト子爵は公爵家の血筋、能力も傑出していた。それを侯爵家というより侯爵夫人の実家が貶めた。それと侯爵夫人の泥棒行為。詐欺師の執事におまえが保証をしてしまった」


「それは・・・・」


「金で済むならいくらでも払う。だがな名誉は回復しない。もともと侯爵夫人は社交界のおもちゃ扱いと言うか・・・・・だが、リンバロスト子爵と血が繋がっていないから関係なかったが・・・・あの母親をお茶会に呼ぶ目的は道化として楽しむ事だったからな」


「なんですってお母様をそんな扱いしていたとは・・・」


「シャーロット、気がつかない君も・・・」


「シャーロットとの婚約を祝う夜会を覚えているかい・・・あの時点でわたしは覚悟をした・・・・」


「どうして、さきに教えてくれなかったのですか?」


「気付いた時は手遅れだった。リンバロスト子爵に執務の大半を任せた王太子と王妃、宰相はわたしに警告をしてきたけど・・・・・わたしは甘く見ていたんだ。王太子妃が無能でも文官が補うからな、王妃の仕事はほとんど文官がやっている。だが、名誉はそうはいかない。王妃の実家に難はない。だが、シャーロットの実家は侯爵も夫人も・・・・夫人はあの緑の石の件がある・・・・侯爵夫人の実家は目も当てられない状態だ。デザインを盗むとは・・・・侯爵があとを継いだのもね」


「お父様がなにを・・・」とシャーロットが気色ばめば


「侯爵はスペアとしても教育も受けてない、正直優秀な養子が継ぐと安心しているときに君のお父さんが放浪から戻って後継に収まってな・・・・けっこう周囲はがっかりしたんだよ・・・・まぁ君のうちのことはどうでもいい・・・・公爵閣下あとの算段はついているんだよな」


「もちろんだ」


話が終わるとわたしたちは王宮を辞したが、不思議と帰りは誰にも会わなかった。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る