09 夜会2
その後二人と一曲ずつ踊ったらバルコニーの椅子に四人座って飲み物を飲んで休憩した。
「落ち着いたら王太子の所に挨拶に行こうか」とアンドリューが言うと
「シャーロット嬢が婚約者になると聞いたときはほっとしたよ」とバージルが呟き
「そうだろうな」とアンドリューが答えた。
なにかあるのだろうか?こんど教えてもらおうと思ったわたしは目があったジェラルドと笑みを交わしたのだった。
「王太子殿下、シャーロット様ご婚約おめでとうございます」というとカッテシーをする。
「お姉さま、ありがとうございます」
「シャーロット様わたくしは侯爵家とは縁が切れております。今はシルバーレイク子爵でございます」
「そうなんですか?辛くて家をでてしまわれて心配しておりました」
なにが辛いだよ。ここでその話題を持ち出すのか。言い値の倍で買ってやんよ。
「確かに侯爵家は辛かったですね。家を出た理由をシャーロット様は辛かったからだと理解してくださってうれしゅうございます」と心持ち大声で言うと、周りがそれとなく聞き耳をたててきたのがわかった。
「毎日痛いブラッシングをされて髪を引っ詰められてほんと辛かったですね」
「「「ブハーブークー」」」と隣で三人が引きつけを起こした。
美形は引きつけても美しい・・・・と思いながら続けた。
「体に合ったドレスを身につけられるのもうれしいですね」
そういうと貴族の奥様たちが微妙に目で合図しあっているのが見えた。
狙いとおりだね。これは微妙な意地悪だから気がついていた人がいるかどうかわからなかったし、エリザベートが気づいていたかどうかわからないけど、ドレスの色合いが老けてみえる色だったり、顔色が悪くみえる色だったり襟ぐりとかもオーダーして作っている割にサイズが合ってないものばかりだったんだよね。バロス工房の売れ残りとか、練習で作ったものをあてがわれていたんだよね、多分。
「お姉様はずっと努力していたのに・・・」
おっとうっかり自分の世界にこもっていた。
「・・・候補としてずっと」
「殿下皆がお二人のダンスをもう一度みたいと・・・」宰相の声とともに音楽がさきほどより音量をあげて広がった。さすが宰相。できる男は違うね。
わたしはバージルと踊ったけど、アンドリューはジェラルドと踊り始めた。
二人が踊り始めると・・・・・注目は二人が独占だ。王太子とシャーロットはまたしても意地悪されたってことかな?
更に追い打ちで公爵四人が、踊り終わったわたしとバージルに拍手をしたのだ。
公爵達四人にわたし達四人が合流した。おもしろい程人が集まって来た。
人間の壁の間からみると王太子とシャーロットがこちらをみていた。二人はこちらに向かって来た。
「ニール公爵来ていただいてありがとうございます」と王太子が会釈して、シャーロットがカッテシーをした。ニール公爵は座ったまま、うなづいた。
「ブルークリフ公爵お久しぶりです。来ていただいてありがとうございます」先ほどと同じように二人は挨拶した。
ブルークリフ公爵はうなづいて
「息子が来るからわたしはいいかと思ったが、婚約者を見たくてな」と答えた。
ここでお祝いを言わないんだよなぁいけずぅ
「カーライル公爵よくおいで下さいました」王太子が会釈してシャーロットがカテシーをした。
「今日は皆と会いたくてな」とカーライル公爵が公爵三人に目を向けて言った。王太子達のほうへは目を向けなかった。
「マクバーディ公爵来ていただいてありがとうございます」と王太子が言うと
「シャーロットとやら挨拶はいいぞ、疲れたじゃろ。エリザベートもおるしな」
とシャーロットを見ながら答えた。
「エリザベート様には申し訳ないことを・・・・」とシャーロットが言い始めると
「そうなのか?」とエリザベートをみると
「確かに侯爵家とは言え粗末な荷物だったな・・・侍女長があきれておった。自覚はあったのか。申し訳ないと・・・・そうか・・・・あったのか」
「いやぁ、シャーロットは緊張しているようで、それではこれで」と王太子は大きめの声で言うとシャーロットを促して戻って行った。
公爵のほうが王太子より立場が強いと知っていたが、実際にみると心臓に悪い。
ほんとこの四人、傍若無人って感じで、国王夫妻にも挨拶に行ってないしね。
「・・・・・初めてだって?」カーライル公爵に話しかけられて我にかえった。
「エリザベート、夜会が初めてかってカーライル公爵が」とバージルが耳元で
「はい・・・・失礼しました。初めてです」と答えると
「デビューもしてないのかい?」とブルークリフ公爵が驚いたので
「はい、いろいろありまして」
「学院も行ってないそうだね」とニール公爵が続けると
「必要はないよ。それは保証する」とマクバーディ公爵が続けると
「だけど、学院は学問だけじゃないし」とニール公爵がいたづらっぽい笑みを浮かべて言うと
「確かにおまえは・・・・・そうだろうなぁ」ブルークリフ公爵も笑い
「「そうだな」」とカーライル公爵とマクバーディ公爵が声を揃えた所で
「料理の追加が来たようだ。バルコニーで食べよう」とアンドリューがわたしたちを誘うとバージルがわたしに手を差し伸べ立ち上がった。
「公爵方、程々に」とジェラルドの声が聞こえた。
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