08 夜会
迎えにきたアンドリューと一緒に王城に着いた。
アンドリューは「いちいち名前を覚える必要はないんだけどね」と言いながらもそれぞれの名前を教えてくれた。
公爵は最後の入場らしいが座って話したいからと先に会場に入り、友人とくつろいでいる。
四公爵はそれで良いらしかった。
わたしとアンドリューはうわさの愛人同士ということで注目されていたが、隅でおとなしく待っていた。
入口付近で楽しげな声がしている。みていると女性が二人とエスコートの二人がやって来た。
女性は互いにしっと口に手を当てるがついつい声が大きくなるようだ。
二人は色違いのおそろいのドレスを着ている。エスコートの男性も調和した装いですごく感じがいい。
はしゃぐ二人をやさしく見守る様子もちょっとうらやましい。
やがてわたしの名前が呼ばれた。会場にはいった。
リンバロスト子爵なんて知られてない名前にちょっと注目されてしまった。
やがて王室メンバーが入場して王太子の婚約が発表された。そしてシャーロットが紹介された。相変わらずカッテシーが安定してない、教育は行われていないのだろうか?
二人が最初にダンスを披露する。それをわたしたちは見守った。その時ひとりの青年が遅れてやってきた。
彼は目立たないようにそっと入ってきて後ろから動かなかったが、なんと隅に四人で座っていた公爵たちが手を振ったのだ。王太子たちのダンスより注目を集めてしまった。
王太子たちのダンスが乱れてしまった。
隣のアンドリューが笑いをこらえて体を震わせていた。わたしはその笑いの発作が移らないよう隅にある料理に気持ちを向けた。
彼が公爵たちのそばに行くとよく来たって感じで四人が背中を叩いている。
笑い声も聞こえる。王族のダンスは続いているが注目は公爵たちが集めている。
これって嫌がらせだよね。
彼が遅れてきた原因を聞き出したみたいで、それを大きな声で吹聴している。
なんでもある商家を襲おうとしている盗賊団を捕まえていたらしい。朝飯前ならぬ、夜会前ってことだね。こんなにハンサムで腕も立つとは。
ほんとこの世界に転生してよかった。美男、美女に囲まれてそれなりにお金があってって・・・・・いるのかいなのかわからないけど神に感謝だぜ。
合図があったのか、アンドリューがわたしを公爵たちのところへ連れて行く。視線が刺さってくるよ。愛人登場だよ。
彼はバージルという辺境伯の三男らしい。辺境伯んちの子なら腕が立つのはあたりまえかと思っていたら、ダンスを申し込まれた。
「踊っておいでよ。僕はジェラルドを待っていたいから」とアンドリューがウインクをして来た。
正直、初めてのダンスを知らない男性とはと柄にもなくためらっていたら
『お願い、うなづいて』と頭のなかで・・・・え?これってと・・・・深く考えずに差し出された手をとってうなづいた。
彼がにっこり笑うと胸がときめいた。だってこの部屋で一番目立つ彼の微笑みだよ・・・・
彼とはすごく踊りやすかった。彼の微笑みをみているとそれだけで魅せられてステップのことなど忘れてしまった。
音楽が終わったとき、ちょっと残念だった。彼がホールドをとかず次の音楽が始まったときはうれしかった。
踊り終わってアンドリューの所に戻ると、ジェラルドが合流していた。
「エリザベート、こんばんは」
「ジェラルド、こんばんは」
「相変わらずだな、二人共」とバージルが言うと
「そう見えるならうれしい」
と三人が微笑みを交わした。
これって見目麗しい男性三人に囲まれたそれなり令嬢って図だよね。視線が痛いが快感だ。
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