02 はいはい、婚約おめでとう
今日も王宮で書類の片付けだ。最近は王妃までちゃっかり仕事をまわしてくる。
なんとか片付けて時計をみると時間がぎりぎりだった。国王一家と侯爵一家のお茶会が三時に予定されているのだ。
護衛の騎士の後ろを歩いていると賑やかな話し声が聞こえてきた。思ったとおりだ。たぶん、違う時間を知らせてきたのだろう。国王夫妻も、ぐるだと思うがどうでもいい。
案内されて席につく。真ん中に二人並んで国王夫妻。右側に公爵夫妻。左側にシャーロットと王太子殿下。わたしの席は国王夫妻の向かいだ。
黙って椅子に座った。
「遅れたことを誤りもせず無礼だな」
「間違った時間を告げられましたし、仕事が増えてまして」と王妃を見ながら答えた。
そう答えると皆が黙って白けた雰囲気が部屋を満たした。
気を取り直した風で国王陛下が
「祝って欲しくてエリザベートを呼んだのだ」
口にだして返事をせずに陛下に目を向けると
「エドワードの婚約が決まった」
と言葉を切るが期待されている祝いの言葉を言わずにじっと見続ける。
「そこのシャーロットだ」
「さようでございますか?おめでとうございます」
わたしの反応に皆が戸惑っているが、あえて知らんふりをしている。
「お前は平気なのか?」とエドワードが怒った風で声をかけてきた。
侍女に目で合図してお茶のお代わりを注がせる。
わたしは次のお菓子に手をだして皿にとると
「平気とはどういったことでございますか?」
「だから婚約者がシャーロットになったことだ」
「それでいいのではございませんか?」
「お姉さま、申し訳ございません。お姉さまのお気持ちも知りながらエドワード様と仲良くなって」
「わたくしの気持ちとはどういった気持ちですか?」
シャーロットは目を潤ませてエドワードの腕を捕まえている。
だめだ、我慢しろって思ったけど出来なかった。
「これからわたくしは、王太子妃教育から解放されますね。うれしい気持ちです」と言ってしまった。
国王一家は一応、無表情。侯爵は
「そうだ、おまえの教育は時間がかかり過ぎたな。シャーロットはすぐに終わるだろう」と言い、侯爵夫人とシャーロットはうなづいていた。
なんとなくわたしのことを見知らぬ人間のようにみているお茶会参加者や侍女を気にせずにもう一度お茶のお代わりを貰い軽く舌打ちをして入れ直しを命じお菓子のお代わりをした。
そろそろ終わりにしようと思ったわたしは席を立った。
「先にお暇してよろしいでしょうか?」
「好きにしろ」とエドワードが答えたので
「ありがとうございます」と答え見事なエリザベートの挨拶の礼をすると部屋をでた。
執務室に寄り軽く片付けると、最後にちょっと見回して部屋をでた。ここに戻るつもりはない。
多分、仕事の手伝いを宰相あたりが言ってくるだろうが、お断りだ。
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