第9話僕以外には聖女様
「進。こんなに可愛い彼女がいるなら早く紹介しなさいよ。何で黙ってたの?」
僕の母親はどうやら完全に不破聖に取り込まれてしまったらしい。
「いや…」
僕がそこまで口を開くと妹は口を挟む。
「この間も早退したお兄ちゃんの鞄を持ってきてくれたんだよ?凄く良い人!」
それを耳にした母親は不破聖に感謝を告げていた。
「本当にありがとうね。進には出来すぎた恋人だわ〜」
僕は嘆息するとそれらを無視して部屋に向けて歩き出す。
「ちょっと!聖ちゃんも連れていきなさいよ!テスト期間中でしょ?勉強教えてもらいなさい!」
それに仕方なく頷くと僕らはそのまま二階の部屋に向けて歩き出した。
自室に入ると僕は彼女に問う。
「何のつもりだ?」
そんな風に問うても彼女は平然とした態度だった。
「ん?家の前で待機してたらお母様に話しかけられて。それで進くんの彼女なんですって話たら家に招かれただけだよ」
それに嘆息すると彼女にしっかりと言って聞かせた。
「僕達って別れたよね?」
その言葉に彼女は首を左右に振る。
「別れてないよ?私は了承してないんだから」
「それは…」
「ダメ。そんな悪い子にはまたお仕置きしちゃうぞ?」
彼女は指を一本立ててこちらに向けると片目を閉じて可愛い子ぶった態度を取る。
「もうあんなのは勘弁だよ…。不破さんの家にはもう行きたくない」
その言葉を耳にした彼女はよくわからないが首を左右に振った。
「当分は家には呼ばないわ」
「そうなんだ…」
安堵して一つ深く息を吐くと僕はテーブルの前の座椅子に腰掛けた。
彼女は僕のベッドに横になっており枕の下やベッドと壁の隙間を調べていた。
その後、ベッドの下を確認して何度か頷いた。
「良い子ね。私以外の裸は今後も見ちゃダメだからね?」
その言葉に苦い表情を浮かべていると彼女は満足気に微笑んだ。
「私のペットになったらいつでも裸を見せてあげるよ?」
その言葉を耳にして僕は首を左右に振った。
「裸を見られるだけがご褒美だなんて割に合わないだろ」
「じゃあ実際に触って舐って腰も振ってみる?」
彼女は冗談めかしてそんな事を言うので僕は再度苦い表情を浮かべた。
「やめてくれよ。聖女様時代だったら魅力的な提案だけど…。現在の不破さんはヤンデレストーカーじゃん。何も魅力的じゃない」
ハッキリと言ってみせると彼女は妖しく微笑んだ。
「今この場でやっても良いんだよ?」
「やるって…」
「私は覚悟できてるよ?どうする?」
それにもやっぱり首を左右に振って答えると僕らはそこからテスト勉強をする。
「今更だけど別れた恋人が僕の部屋に居るのは変な感じだな」
そんな事を口にしても彼女はいつものように言葉を発する。
「別れてないってば」
それに返事をすることもなく僕らは夕食までテスト勉強に励むのであった。
彼女は夕食をうちで食べていき成り行きから僕は彼女を家まで送ることとなった。
無事に家の前まで送ると彼女は僕を抱きしめて耳元で一言。
「これからは直接、進くんの家に行くからね。よろしく」
それを耳にすると僕は肩を落として嘆息する。
「あぁ。あと、私以外にも気を付けたほうが良いこともあるかもね」
などと彼女は意味不明なことを言って家の中に入っていく。
僕は帰路に着くのだがその後知ることになる。
他の面倒事にも首を突っ込んでいることに…。
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